第6話 メイドの知らせ

 名前を得た後、皆で簡単に名乗ることとなった。


「じゃあ、まずは私から名乗りましょう。私はセザール。貴女の母よ。」


 長身で白髪の美女はどうやら僕の母らしい。目付きは少し鋭いが、その瞳は琥珀色で美しく、彼女の美をより一層引き立てている。ただ、さっきから顔色悪いけど大丈夫なのだろうか?


「俺は…父のイヴァンだ。」


 母よりも更に長身で恐らく百九十センチぐらいはある長身痩軀で銀髪の美青年は父らしい。こっちも終始息が荒いけど大丈夫なのか?まぁ、母よりは顔色は良さそうだし放っておいてもいっか。それにしても…。


 この二人、傍から見れば女性セレブとその護衛のSPにしか見えない。特に父など自己紹介以外はほぼ静観を貫いてたので余計に様になっている。


「私は姉のリディアと。」

「レイラーです。」


 銀髪で元気っ子と言わんばかりの父似の美少女がリディア、白髪の大人しいそうな母似の美少女がレイラーだ。


 見た目からして、リディアが長女でレイラーが次女なのだろう。どちらも…というより、リディアがキラキラとした瞳でこちらを見つめている。新しいおと…妹が出来たことに喜悦で胸がいっぱいなのだろう。


 少々姉二人の視線が気になるところだが、ここで全員の自己紹介が済んだのを確認した母が疲れた様に言う。


「ここじゃなんだし、そろそろ帰りましょうか。」

「そうだな。もう疲れた。」


 そう言いながら二人は歩みを進める。


「それじゃあ行こっか!!」


 僕も姉二人に手を繋がされて一緒について行く。


 転生したと言えど、中身は十四歳なのだ。子供扱いされると地味にムカつくがここはグッと抑える。


 歩いていて気付いたが、両親ともにかなり消耗してるように見える。


 もしかして、僕のせいなのかな?


 天使がどういう風に子を儲けるのかは知らないけど、二人の消耗は間違いなく僕の誕生が原因だと思う。


 そうこうしてる内にどデカい出口が見えてくる。その出口はまるで扉の無いど○でもドア第一号並みの大きさだ。


 僕はその大きさに圧倒されつつも扉を潜る。


 神殿を出ると開けた広場に芸術的価値の高そうな西洋風の建築物がいくつも並んでいた。


 前世では画像越しでしか見たことのない建築物を眺めていると、すぐそこの柱にメイド服を着た金髪の美女がクールに柱にもたれ掛かっていることに気付く。


「待ちくたびれましたよセザ。」

「あれ?カルミじゃん。なんでいるの?」


 知り合いなのか母が問う。


 というか多分メイドさんで合ってるんだろうけど、その格好で気軽に喋る姿にギャップの酷さを感じる。そんなメイドさんが僕を見る。


「ん?そこの子は初めましてですね。わたくしはカルミナと申します。気軽にカルミとでもお呼び下さい。」


 カルミナさんは一歩前に出ると手を前で重ねて軽くお辞儀する。その所作は完成されていて一切の隙がない。


『ん。』


 まだ舌足らずのため、上手く言葉を発せないので、とりあえずコクリと頷いとく。


「それで何でいるの?」

「どうやらサリエル様はその子に興味がお有りの様ですので、連れて来て欲しいとルドの奴が言ってたから来たのよ。」


 最後には私怨のようなことを言いつつも、手のひらを上に向けて僕を差す。


「「え?」」

『!?』



 ◆◆◆


「出生(?)」は主人公は天使が生まれる仕組みを知らないから「(?)」こんな感じの表現になってます。



「何故、名前でなく短縮した名前(愛称)で呼んでるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。皆さんも長年一緒にいる友達なんかとはよく愛称で呼び合いますよね?それと同じです。それも平均年齢(寿命ではありません)が万単位の天使族なら尚更です。



主人公(ヘレン)は中身が14歳で元男ではありますが、女性(というか人)には一切興味がないため、美女を見ても「うわー、美人だなー。」程度の感想で終わります。(こう言う主人公いても良いよね?)



「どこでもドア第一号」は映画ドラえもんの秘密道具ミュージアムに登場します。

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