vsサラマンダー(キラー)終
無効化された物は完全に元通りに戻る。
散らばった石たちの丁度真ん中にサラマンダーは存在した、それが穂高の策略だとも理解出来ずに。
「事象無効」
石は砕かれていなかった。
撒かれた石がそれぞれの位置からしての中央に集まる。
サラマンダーはこれに気が付くがその時にはもう自分をめがけ飛びかかる石を避ける事は出来なかった。
石は次々と集まり、元の岩へと形を戻す。
石の復元される座標とサラマンダーのいる座標が被り、そして概念的とすら言えるであろう無法のスキルによって
サラマンダーの腹部の半分以上が石へと置き換わる。
これを配信で公開するつもりは無かったがこの敵は少し危なかった、この技を使ってしまうまでに強い敵だった。
そして条件としてこれが行えるのは事象付与が行われた対象物が、1つの場合は自分の半径20メートル以内、複数ならその破片達全てが自分の半径20メートル以内に配置されている時だけだった。
「グゥアガァァァ゛!!!」
体を削り取られたサラマンダーは吠える。
「らしくなったじゃないか!なぁ!」
応えるように僕も声を荒らげ挑発する。
サラマンダーはまさに胴体が皮1枚で繋がっている、とでも言えるような状態だった。
しかし僕を殺そうという明確な意思が途切れることはなく、最早下半身がちぎれたとしても頭だけで噛み付いて僕を殺そうとする勢いだ。
地面を這いずりジタバタともがき、その状態でも僕にブレスを放ってくる。
「狙いももう滅茶苦茶じゃないか。」
しかしそれは僕に当たる事など無かった。
削り取られた箇所からは血液とでも錯覚するかのようにサラマンダーを構成している魔力が溢れ出る。
僕の石の残りストックは5つ、新しく作る事も可能だが事象付与は燃費が悪い、先程無効で固めた石も、僕のスキルでは2度目の事象付与が不可能だからやはりこのストック数で乗り切るしかないだろう。
「手始めにその残った目」
僕は射出機で1つ目の石を奴の目に狙いを定め撃つ。
バタバタと暴れても足が繋がっていなければ殆ど動けないのは道理だろう、故にこの石は奴の目に直撃した。
「砕かれた」事象と言う名の水が、乾いたスポンジであるサラマンダーの目に吸収され、遂に残った最後の目が砕ける。
「あとはジリジリ削っていこうか。」
そしてその数分後サラマンダーは魔石へと姿を変えた。
♢
「えげつねぇな、時間は掛かったが配置でほぼ即死技の防御無効か……」
穂高とサラマンダーの勝負、それは呆気なく終わりを迎えた。
防戦一方だったはずの穂高が発動したスキルによる初見殺し。
・穂高笑ってるの何?
・アイツ強いヤツと遭遇したら定期的にあんな感じになってるぞ、口調もちょっと荒くなる
・なにあの技、見た事ないんやが?
「そうなのか?俺はよく知らねぇが3年間もアイツは配信活動やってたんだろ?
まぁ隠してる技の1つや2つ、有るもんか」
実際俺だってスキルの内容は明かしているが詳細な事は数人にしか打ち明けてねぇし……
そんなもんかねぇ。
少しよそ見をしてコメントを返している内に穂高は帰ってきたらしい。
「ガンナーさん!終わりましたよ!」
体に複数の火傷跡と傷を残しながらもいつもの敬語で、その手にはサラマンダーの物であっただろう大きめの赤黒い魔石があった。
「お、それはアイツの魔石かい?
これ鑑定に出せばアイツの強化倍率が幾らだったかわかるだろ?」
「ええ、そうですね。
にしてもこれだけの強さのキラーが湧いたのと前回のキラーが比較的早めに死んでしまった事。少し臭いませんか?」
実際ちょっと気にはなる点だ。日永は確かに「たまたまキラーが死んじゃったらしくてなぁ」と言っていたが、アイツの全てを信用する気にはなれない。
「あぁ、そうだな。」
俺はその問いに肯定を返す。
「じゃあ俺はこのまま1日ダンジョンで待機して次のキラーの様子見とくから、穂高は早く帰って日永に報告してこい。
あとこれ、お前の配信機材だ。」
次に湧くキラーが自浄作用を維持できる程の強化倍率を持っているのか確認するのもキラーを殺した者の役目だ。
だが穂高は戦闘で疲れてるだろうし、ここは俺が待機する事にした。
「本当ですか、感謝します!
それでは、ありがとうございました!」
そう言い穂高は元来たルートを辿って俺から離れていく。
そして俺は1人になり、配信を見てる奴らに話しかける。
「んじゃ、俺は俺でキラーが湧くまで待機するとすっかな。」
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