キラーは譲りません

やはりランクA+の探索者が2人もいればこの程度のダンジョンは造作もない。そもそもこのダンジョンの推奨ランクはCランク以下。

それを現在存在する最大のランクを持った人間2人が踏み荒らしていくのだ、大抵のモンスターは当たり前のように砕け散り爆散し肉体が崩れる事すら許されずにその姿を魔石へと変化させる。


・異常な倍率のキラーが出てきたって言ってたから心配してたが……

・何の心配もなさそうで笑った

・恐ろしいまでの蹂躙劇

・片っ端から爆散したり切り捨てられるの怖すぎ


「ガンナーさんが居るとダンジョン攻略が楽で有り難いです。僕も遠距離の探索者雇おうかな、と今思いましたが……ガンナーさん程の手練れは中々居ないですよね……」

「ハハッ、そう言われると嬉しいねぇ

世辞の上手い後輩が入ってきたもんだ、歓迎してやらねぇとな。」

他愛もない会話を広げ、本来なら緊張すべきダンジョンと言う空間にそれとは真逆の空気を醸し出す2人。


他愛もない会話に挟む銃撃、切り込まれる刀、その全てがもはや舞のようにモンスターを屠っていく。

鳴らす足音はモンスターにとって死の響きそのものだった。


そして2人はようやくキラーの居る7階層へと辿り着いた。


「ガンナーさん、可愛い後輩としての頼み事なのですが、キラーとは1人で戦わせて貰えないでしょうか。」

通常より強いキラー、是非とも戦ってみたいものですしね。


「おいおい、大丈夫か?

確かにここはCランクのダンジョンだしそうなればキラーの素体になるモンスターもよわいだろうけどよ、倍率が分からねぇ内は危険が存在するんだ。お前もこんなとこで下手に命失っちゃ嫌だろ?」

ガンナーさんは、ガスマスクに覆われて見えないものの、それでも僕にはっきりとわかるように「こいつ気が狂ってんのか?」と言う表情をしていただろう。


「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えばそれは大丈夫じゃないですね。

ですが、僕はキラーと戦って楽しい、先輩は楽ができて楽しい。win-winって奴ですよ?」

確かにガンナーさんの言う通りキラーの倍率が不明なうちは危険な点が多い。

でも


「何より、その獲物は僕の物です。

キラーは譲りません、そのために須佐之男に入ったんですからね。」

入隊したメリットを捨ててまで気にする事では無い、ただ娯楽を、ただ戦闘を、純粋に楽しみたいから。


「お、おう。そうか、悪かったな。」

そう放つ穂高を前にガンナーは

とんでもねぇ新人入れやがったな!日永!!

なんだよアイツの目、明らかにヤバそうじゃねぇか!と1人心の中で毒づく。

「じゃあよ、お前が死にそうだ、と俺が判断したら助けに入らせてもらおうか、これでいいな?」


「はい!ありがとうございます!」

やったぁ!と声をあげ先程とは全く違う態度をとる穂高に、視聴者もガンナーも恐怖を覚えたという。


「それでは視聴者の皆さん、今から七階層に入っていきます、どのモンスターがキラーになっているんでしょうか。」

「極力楽な相手だと、いいんだがなぁ」

・実際ホタテがA+とはいえ、魔臓ぶち抜かれたら死ぬしなぁ……

・なんでこいつ1人で戦うことに固執するんだろうな

・さぁ、でも探索者なんか基本そんなもんなんじゃね?


そんなコメントを見て穂高に聞こえないようにボソッと視聴者たちに

「アイツダンジョンが無かったら絶対に人殺してるぜ……」

と呟くガンナー。


・確かにw

・ダンジョン……あってよかった!

・怖すぎる

と賛同の声が湧き上がる中


不意に穂高とガンナーの2人は一定の方向を見つめ始めた。

「………… ガンナーさん、いました。」

「…だな、ありゃやべぇぜ?」


Cランクダンジョン:キラー

強化倍率:70

素体:サラマンダー



♢

トピック:サラマンダー

炎の下位精霊として有名な存在。

見た目は炎をまとった大きなトカゲ

単体ではdランクの冒険者でも討伐可能なモンスターではあるが、炎のブレスを吐くため注意が必要。

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