そうだ土下座をしよう

「見つけました!遅れて申し訳ありません、ガンナーさん。」

発見してまずすることは謝罪、話はそれからだ。


黄色いフード付きのコートを着込みガスマスクを付けた男、ガンナーはこちらをまじまじと見つめる。

そして手元には今までに幾多ものモンスターを屠ってきたアサルトライフル。


(やはり遅れてきたのが不味かったのか……)

もう一度、なんなら土下座で謝ろう。


「本当に申し訳ッ!!」

腰は低ければ低いほど良いのだ、となれば決着は速攻。ダンジョン内の植物ゆえの少し湿った床に手を付き、勢いよく頭を下げようとする。


「待て待て!」

頭を地面に擦り付ける前に止められたので一旦正座の体勢になる。

「はい、なんでしょうか?」

「温度差怖ぇな!会って急に謝罪からの土下座まで決められようとして状況を読み込めて無かっただけだ、安心してくれよ。にしてもアンタ……なんか苦労してそうだなぁ。」

何かを感じ取ったらしく1人で何かを唸るガンナーさん。


「いえ、特に苦労などはしていないですが、単純に遅れてしまったのでまずは謝罪から始めなければいけないな、と思いまして……」

「なら大丈夫っての、俺なんにも迷惑してねぇんだからよ。しかも遅れるって言ったって……アンタ今日須佐之男に入った…えっと名前ェあー、名前なんだっけ?」

「僕は穂高貞人と申します。これからはよろしくお願いします、先輩!」

「お、おう。そうか。

話の続きだがアレだ、穂高もそもそも約束とか言わず、急に日永に行けって言われただけで俺との時間の約束とか何もしてねぇだろ?だから安心してくれよ。しかも…」


ガンナーさんは言い淀んだ風に次の言葉を告げる。


「今配信中なんだぜ?

入ってばっかの後輩をダンジョン内で全力で土下座させる先輩、とかネットに書かれたらどうすんだよぉ……」

不安そうな目…マスクに覆われていて見えないが多分そんな感じの目でこちらを見つめるガンナーさん。

それを言われ僕は自分もガンナーさんも配信中である事を思い出した。

急いでコメント欄を見ると


・これは悪い先輩ですなぁ

・速攻土下座は流石に草生える

・A+探索者が土下座をする世にも珍しい配信はこちら


等と好き放題書かれていた。

これでは僕のせいでガンナーさんに被害がいってしまう…頭が回らなくなった僕はとりあえず謝った。

「あ、あぁ、申し訳ございません!ガンナーさん!」

「いや、だから謝んなって!俺が悪もんじゃねぇか!もう大丈夫、大丈夫だから!」


そんな様子を見て


・学ばないホタテ

・探索以外はダメなホタテが好きなのさ!

・普段言動が荒めのガンナーがここまでなの草

・こんなのでキラー倒せるのかよ…


視聴者たちは相変わずと賑やかだったようだ。


♢


「まぁ場も落ち着いた事だ、とりあえず自己紹介でもしようぜ。俺はガンナー、須佐之男所属のA+探索者だ。」


ガンナーさんは簡単な自己紹介を終わらせ、次はアンタの番だ、と促してくる。


「それでは、僕は穂高貞人です。

本日から須佐之男に入隊したランクA+の探索者です。これからはよろしくお願い致します。」


これで自己紹介は終わった。

そして一連の流れが終わった事でようやく両者とも本題に入ることが出来た。


「んじゃ貞人って呼ぶぜ?

貞人、キラーがいる7階層まで軽く話しながら行くぞ。」

「はい、わかりました。」


そのうち須佐之男のメンバーの話や日永さんの文句を愚痴り続けるガンナーさんの話を聞いていると、僕達の目の前にサラマンダーが現れた。


先輩の手を煩わせる訳には行かないだろう、

「僕がやってきますので先輩は歩いていてください。」

そういい僕はガンナーさんの前に立ちサラマンダーに向かって歩き出す。

だが


「いやいや、大丈夫だって。むしろ俺は先輩だ。後輩に少しは良いとこ見せねぇとな?」


とガンナーさんは言い、その瞬間に僕の横を通りサラマンダーを破裂させる銃声。

流石はA+の探索者だ、速攻で銃を構え打つ速度も並の探索者の比ではなかった。


「な?ほら、行こうぜ!貞人。」

そんなガンナーさんは能天気にも軽快なステップを刻みながらダンジョンの更に奥へと歩みを進めて行った。



♢

トピック:須佐之男(スサノオ)

主人公が所属することになったチーム

現在のメンバーは主人公を含め6人

チームの一人一人がA+でも上澄みの力を持ち基本的にはダンジョンの異常確認等を政府から依頼される事が多い。

場合によってはテロリスト等の始末にも駆り出される事になる。

須佐之男の文字通り一人一人が武の神の名前に恥じぬような力を持ち合わせているらしい。

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