準備って思ったより時間かかります
普段使いの刀、オーダーメイドの石を射出する道具、速度とその貫通性の高いスキルの為に極限まで重さを削ぎ落とし、魔臓を守るためだけに作られた装備。そして魔石を詰めるためのバッグと食料。
量ある荷物は特殊なスキルを持つ人間以外にとってはダンジョンにおいて邪魔なだけだ。装備も必要なのは人間において心臓の次に重要な部分、魔臓を守るためのプロテクターだけを用意する。
なんと言っても魔臓は人間のステータス、魔力、スキル、全てを司る器官なのだ。探索者として、これだけは死守しなければならない。
魔臓が潰れれば、それは探索者にとって死を意味するのだから。
必要なものを全て揃え確認も終えた僕は先程日永さんから位置情報を送って貰った目的地であるダンジョンへと向かった。
電車で目的地へと向かい日永さんと別れてから30分程で例のダンジョンへと到着した。
ダンジョンへの入口は通常より強い個体のキラーが湧いたとして政府の人間によって封鎖されているようで、数人の男がダンジョン入口付近に待機しており入る人間が居ないかどうかを監視していた。
そちらの方へ僕は歩いていき、身分証明書でもあり探索者である証拠のギルドカードを見せる。
と言っても今の時代は電子化されたギルドカードが存在しており、ただただスマホの画面を見せつけるだけではあるが。
そして男達に要件を伝える。
「すみません、穂高 貞人です。
新しく須佐之男に入隊し今回の問題を解決するために日永さんからこちらに遣わされました。
それと……こちらにガンナーさんは来ていらっしゃらないでしょうか?」
30分も待たせてしまったのだ、すぐに見つけて謝らないといけない……でなければ罪悪感が正直ヤバいのだ。
すると記憶に新しかったようですぐに返事が返ってきた。
どうやら
『待ってるやつが中々来ねぇんだ、ちょっくらダンジョンの中見に行ってくる。それっぽい人が来たら入ってくるように伝えといてくれや』
との事らしい。
思っていたよりガンナーさんは自由奔放な方らしい。
合流するためには……
僕は世界的サービスであり探索者用の配信アプリを起動する。ガンナーさんは基本的にダンジョン攻略は『面倒臭いからライブ撮るようにしてんだわ』とどこかの記事で語っていた。
となれば今回もその可能性が高い。
故にガンナーさんの配信を確認してその現在地を追っていけばたどり着けるはずだ。
僕はガンナーさんの配信チャンネルを見つけ出し、そのチャンネルがライブ配信中である事を確認する。
◇
『んでまぁ探索中って訳だ。』
・実際強化倍率どのくらいのどのモンスターなんでしょうかね?
・前回の強化倍率が24から25倍らしいな
・24倍でも普通にヤバイしそもそも前のキラーはサラマンダーだったろ?ポップしたの2ヶ月前だけどそんなに早く死ぬ?
『モンスターと言えどたかが生物擬きだ。命の限りがあるし死にもする、そんだけだろ。』
◇
僕はそれからも少し配信を見続け、
どうやらガンナーさんはここのダンジョンの地下2階にいる事が分かった。
「それじゃ行きますか。」
僕は独り言を呟きこちらも配信の準備を行う、僕もわざわざダンジョンに入ってから記録を付けるタチでは無いのだ。
待たせたからすぐに謝罪しよう
そう思いながら穂高はダンジョンの入口へと入っていった。
♢
トピック:穂高の射出機
穂高のスキル「事象付与」をより効率的にするための道具。砕かれたという事象を石に込めそれを射出し、それが相手に当たると石と同じ分の体積が砕け割れる。
このスキルは事象を無理やり相手に押し付ける物なので当たればガードも防御も貫通する、無法のスキルである。
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