第43話 トラブルメーカー

 さてこいつをどうするか。

 無視を決め込むには既に反応してしまったから手遅れだ。

 取り敢えず穏便に済ますか、徹底的に懲らしめるか。

 俺が悩んでいるのを無視されたと思ったのか、

「おうおうあんちゃん、一寸装備がいいからって気取ってんじゃねえよ。そっちの嬢ちゃんは連れか?ペアルックとか見せびらかしやがって!気が変わった!有り金全部俺に寄こせ!俺様が有意義に使ってやろう!」

 ・・・・なんだこれ。


 で、気が付けば周囲の注目を集めており、受付の女性はおろおろするばかりで止めようとしない。


 周囲からはやめとけよ、とかギルド内でトラブルはよせとか、色々言っているが直接止めようとする人はいない。

 レナーテ達がここに居ればきっと止めたのだろうが、もう既に建物内から出て行った後だったりする。

 俺がどうすべきか決めかねていると、

「おらあ!さっさと寄こせや!」

 等々実力行使に出たようだ・・・・と言うかあまりにも短絡過ぎだぞ。

 そいつは俺の肩にずっと触れていた訳だが、俺を突き飛ばしてきた。

 そうなる事を予見していた俺は突き飛ばされる直前、ダンジョンで得た魔法のうちまだ一度も使っていない魔法を使ってみた。


 その名は【サクリファイス】、つまり身代わりだ。

 この場合俺が受けたダメージを物体及び生命が代わりに受けるという魔法だ。

 これは魔法を唱えた時自身の半径1メートル以内に対象がいないと成立しない。

 そして触れていれば成功率が上がる魔法だ。

 ダンジョン内で俺はダメージを受けなかったので使う事はなかったので、今まで使っていなかった。

 そしてまだ一度も使った事が無い魔法はまだまだ沢山ある。

 使わないま一生を終えそうな魔法もあったり無かったりする。

 この魔法、単なるダメージの身代わりだった場合はこれぐらいで済むが、死ぬほどのダメージを身代わりとする場合、もっと特別な身代わりが必要となるが今はいいだろう。

「うわ!」


 俺は敢えて抵抗せずに吹き飛んでみせた。

 その甲斐あって?俺は派手に吹き飛び・・・・きっとここまで派手に吹き飛ぶとは誰も思わなかっただろう・・・・そのまま壁に激突し、壁を破壊しつつ建物の向こうへ突き抜けた。


 先ず腕の骨が折れた。

 次に感じたのは顔に酷く熱い感覚。

 きっとざっくり切れたのだろう。

 脚も変な方向に曲がっている。


 俺は鎧を、しかもダンジョンの奥深くで得たのを装着しているのに何故こんなダメージを受けたのか。

 この鎧、防御力を自身の魔力で補う必要があったりする。

 それを一瞬遮断したので、防御力がザルだったんだ。

 で、俺は一言で言えば重傷を負った訳だが10秒程すると俺は光り輝き、気が付けばダメージは回復していた。


『ぎゃああああ!!!!』

 建物内でひときわデカい叫び声が聞こえた。

「マスター大丈夫?」


 桜が心配してきてくれた。

 因みに彼女の名は【ブロッサム・チェリー】になっている。

 逆な気もしたが、ブロッサムが姓で、チェリーが名だそうな・・・・どうでもいいが。

「問題ない。愚か者はどうなった?」

「何か突然酷い状態になってのた打ち回っているよ。」

 バカな奴だ、自身に魔法が使われたのに気が付かないとか、鈍いにも限度がある。


 俺はもう一度冒険者ギルドの建物へ入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る