第42話 見知った人が居た

 早速受付をしようと思ったが、先客がいたようだ。


 見た事がある人のような気がするものの思い出せない・・・・誰だっけなあ。

 それとなく見ていたが思い出した、レナートだ。

 1人か?それにしても何だか雰囲気が違うじゃないか。

 何故わかるのに時間がかかったかと言えば、彼女は軽装だったからだ。


 俺の知る限り、ダンジョンでは常に鎧姿だった。

 なので最初彼女とは気が付かなかった。


 それに何だか髪型も違ったような?

 元の髪型なんだっけ?

 ヘルメット姿だったから見ていなかった!


 で、レナーテは受付の女性に何か聞いているようだ。


「・・・・ティモ氏が戻ってきたら必ず知らせてくれ。我々はクランハウスに人を常駐させている。」

「分かっていますよ。」


 ・・・・俺なんかしたか?


 彼女は何だか気落ちした雰囲気で冒険者ギルドを後にした。

 尤も俺とすれ違う時、立ち止まって俺をジーッと見ていたが、俺とは気が付かなかったようだ。


 入れ違うように俺は受付へ向かった。


「ようこそ冒険者ギルドへ。どの様なご用件でしょうか。」

「済まないが彼女を登録してほしい。」

 流石に桜は冒険者として活動していた訳ではないので、今後擬態して活動するには登録しておいた方がいいと思ったからだが、本当に登録できるのだろうか。


「畏まりました。では冒険者登録するに・・・・」


 桜は冒険者として登録が出来た。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「次なのだが、魔石を売りたい。」

 ダンジョンで魔物を仕留めた後に得られる魔石。

 かなりあったので、一部を換金する事にした。

 本来であれば全部所持しておきたい所だが、街で暮らすには金がかかる。

 冒険者として活動するにも金がかかる。

 いつもは薬草採取等で食いつないでいたが、折角ダンジョンで活動できるようになったからには、より効率の良い魔石を売った方が沢山金が手に入る。

 そうは言ってもダンジョン内でたっぷりアイテムを手にしているから、それらを売ればもっと金を稼ぐ事は出来るが、実際ダンジョンで得たアイテムって、そうそう市場には流れない。

 特に魔法を使う事が出来る魔道具はよほどの事が無い限り流出しない。

 そうは言っても余分があれば売る冒険者がいない訳ではない。

 そう言うのはオークションで扱う事が多いようだ。

 時間はかかるが一番高値で売れる販売形式・・・・いかんいかん、脱線した。


「・・・・こちらが魔石の代金となります。」


 見た事の無い金額だ。

 薬草採取で得られる金は微々たるものだ。

 毎日休みなく採取しに行かないと、とてもではないがまともな暮らしはできない。

 精々銀貨10枚程度(1万円)ぐらいしか稼ぐ事が出来ない。

 そうそう、銀貨10枚は小金貨1枚と同等の値段だ。

 で、今回提示された代金は、金貨10枚。

 因みに金貨1枚は小金貨10枚だ。

 つまり俺は日本円にしてざっくり100万円得たって事だ。

 それも手持ちの極一部だけしか売っていないというのに。


 俺は金をカードへ入金してもらっていたが、背後から肩を掴まれた。

「おうおうにーちゃん、景気がいいなあ。俺になんか奢ってくれよ。」

 俺は振り返ってそいつを見た。

 俺をダンジョンの視えない壁に押し付けた奴だった。

 すっかり忘れていたのに、思い出した。

 すると何だか腹が立ってきた。


●   作者からのお知らせ  ●


ここまで読んで下さりありがとうございます。

ストックが切れたタイミングで、プライベートですが仕事が忙しくなってしまい、残業で帰りが遅くなってしまっています。

残業がある日に執筆活動はかなり厳しいので、次の更新は週末になりそうです。

時間が取れれば何とか投稿していきたいですが、現実的に厳しそうです。




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