第5話 威力は変わらないはずなんだが

 俺が使うウィンドは、レベルが低いのでそよ風程度しか風が発生しない。

 そよ風?び風?どっちも微風って書くんだけどな!

 どうでもいいって?話を元に戻そう。


 俺の魔法はレベルが低いのに何故ゴブリンは豪快に吹き飛び、壁に激突して凄い事になるんだ?


【失念その1】

 この時俺はあまりもの凄まじさに大切な事を失念していた。

 つまりここはダンジョン。

 特殊な道具や魔石無しで魔法を使う事は出来ないはず。

 それなのに俺は使えた。


 お!魔石発見!

 ゴブリンが倒れ、床には魔石が落ちていた。

【失念その2】

 目の前にある魔石へ目がいってしまい、もう1つ見落としてしまった。

 何故そよ風程度の魔法でゴブリンを呆気なく仕留める事ができたのか。


『うっしゃああ!!実は俺って魔物を初めて1人で仕留めたんだよね。』

 俺氏、今までろくに魔物を仕留めた事が無かった件。

 活動はほぼ採取オンリー、これでは戦闘系の能力は上がらない。

 魔法も使ってなんぼ。

 攻撃系の魔法は基本、魔物を仕留めないとレベルアップしないらしい。

 だから今まで俺はレベル1のまんま。

 補助系や回復魔法はその限りではないが、俺氏、血を見るのが苦手で血まみれの怪我人を見れば失神する自信あり。


 魔石を回収し終え、さてどうするかと思いを巡らそうとしたが叶わなかった。

 何せ、

『今の物音は何だ?』

『上層なのに下層の魔物が出現したんじゃねえか?』


 そんな声が聞こえてきたのでさっさとずらかる。

 ダンジョン産のゴブリンは、基本魔石しか残さない。

 稀に武器を残すが精々錆たナイフとかこん棒モドキの棒きれだったり。

 残しても魔石以外は価値がない上に荷物になるので基本無視だ。


 俺は声が聞こえなくなるまでひたすら歩いた。

 俺の体型では長時間走るのは厳しいからだ。

 10秒で行動不能になる自信がある。


 そして俺に更なる悲劇が訪れる。

 追われているのに突然尿意を催してきたのだ。

 だがこのまま立ち止まる訳にもいかない。

 俺は必死に歩いたが、よりにもよって更なる便意が来た!大の方。


 小はまだ漏らしても何とかなるが、大は駄目だ。


 小は臭いさえクリアできればそのうち乾く。

 白い衣類だと黄色っぽくなりそうだが、基本冒険者は白い衣類なんか着ない。

 黒っぽいのやら灰色がかったのだな。

 ああとは茶色っぽいやつ?

 たまに血のシミが凄い姿の冒険者を見かけるが、洗わないのか?

 だが大は服を着たまましてしまえば・・・・わかるよな?

 そりゃあ戦闘中に、しかも生きるか死ぬかの時に、悠長に尻出してする訳にはいかないが、そして我慢できずにそんな事をやってしまって、尻出したまま敵に切られて死ぬのはごめんだ。

 尻丸出しの死体を見れば、発見した奴はどう思うだろう?


 追われているというのに俺はくだらない事を考えながら便意をどうすべきか、真剣に悩んでいた。

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