第4話 追われていると思う恐怖

 俺は元々ダンジョンに入る予定は無かった。

 なのでそもそもダンジョンで活動するのに必須な装備や道具を持っていなかった。

 そりゃあ草原で薬草採取をするのに小型のナイフは持っていたりするし、さっきヒカリ苔を採取したばかりだから灯りはある。

 そして水筒もあればちょっとした食料も持っている。

 だがそれは1日分しかない。

 ダンジョンで活動をするのであれば最低1週間分の食料や水は必須だ。

 しかし今回俺は想定外なトラブルのせいで、予定していなかったダンジョンへ入ってしまった。

 まともな装備はない。

 しかし出口に戻ればまたあいつに同じ事をされてしまう可能性が高い。


 さっき受けた痛みをもう一度受ける事態は避けたい。

 そして元々怪我が治りきっていない状態だったので、常に感じる痛みのせいもあって俺は周囲の警戒を怠っていた。

 つまり先程飲んだポーションでも、治りきらないダメージを負っていたって事だな。

 それが俺の判断力を更に鈍らせた。


 ダンジョンを暫く進むと俺は背後から音がするのに気が付いた。

 足音だ!

 俺はできる限り急いで移動速度を上げた。


 そして再び前方へヒカリ苔を投げる。


 暗い場所では前方が分からず、壁にダイブする可能性がある上、魔物に遭遇しても気が付きにくい。

 壁にダイブは何とかなっても、魔物と遭遇するのは不味過ぎる。

 尤もヒカリ苔を使う事で周囲が明るくなり、俺が発見されてしまうかもしれない。

 しかし周囲が見えないまま進むのは危険すぎる。


 俺はヒカリ苔を道しるべに逃げた。

 だが残念ながら足音は相変わらず聞こえてくる。

 こうなったら仕方がない。

 俺は走り始めた。

 しかし足音はずっと聞こえてくる。


 で、俺は足元をよく見ていなかったせいか、何かに躓き無様にこけた。

 終わった・・・・


 これでもう追いつかれる!そう思ったのだが何かがおかしい。

 あれだけ直ぐ近くに足音があったというのに、全く聞こえなくなったのだ。

 俺は急いで起き上がり・・・・ふと思ったので、一度足をドン!と地面に音が鳴るように踏んずけた。

 するとさっきのような音がした。

 ・・・・どうやら俺は自分の足音を、追手の足音と勘違いをしてしまったようだ。

 ハハハッハハハ・・・・なんてこった!いもしない追手を、よりにもよって自分の足音と勘違いしてしまうとは!

 バカだな俺氏。

 そしてもうひとつバカをしでかした事に気が付いた。


 どうやら俺が追い立てられていると思い込んで向かった先は、魔物の密集地だったようだ。

 魔物に遭遇する前に躓きこけた事を褒めるべきか否か。

 あー、折角前世?を思い出したというのに、知識を役立たせる事なくここで終わるのか。


 で、現れたのはゴブリンだった。

 しかも10匹以上。

 1匹だけだったら何とか・・・・ならないな。

 武器を持っていない今の俺では、ゴブリンは脅威以外の何物でもない。


 前方のゴブリンが俺に襲い掛かってきた!

 俺は地上で魔物と遭遇すれば、何とか魔法でけん制したりして、その間に逃げる事が多い。

 地上だと大抵地面は土だ。

 だからで地面にウィンドを用いれば、いかに低レベルだろうと多少の土ぼこりが舞い上がる。その隙にとんずらって魂胆だ。


 なので無意識にダンジョンで魔法を使ってしまった。

 手を振りかざし、風魔法のウィンドを使った。

( ̄∇ ̄;)ハッハッハ・・・・使える訳が・・・・うわ!

 見ると前方に居たゴブリンは、一匹残らず吹き飛んでいった。

 そして吹き飛びつつ壁にぶつかり粉々になってしまった。

 え?なにそれ。

 俺氏の魔法は種類こそ多いが皆低レベルだ。

 俺氏いつの間にか超人になったのだろうか。

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