「やきもち」
第7話 全部が楽しい
そして迎えた日曜日。
約束の10分前くらいからそわそわしてリビングと玄関を行ったり来たりしている私の様子を、妹は
すると、ピンポーン、という音が聞こえ、私は飛びつくように玄関を開ける。
「おはよう。迎えに来たよ」
一見カジュアルな服をしっかり着こなした奏音が迎えに来てくれた。
「おはよう。おぉ、かっこいいね。いつもと雰囲気違ってなんだか新鮮」
「ありがとう。美緒も今日の服装似合ってるよ」
今日の私は白いフリルのブラウスに黒いスカート。
実は昨日、おしゃれに詳しい妹にコーディネートを手伝ってもらったのだ。今までファッションには疎かったけれど、服を選んだりする時間は案外楽しかったのでこれからファッションの勉強もしてみようと思った。
「嬉しい。じゃあそろそろ行こっか」
妹に感謝の気持ちを込めつつ「いってきます」と言い残して家を出る。
遊園地までは電車とバスを乗り継いで1時間ほどかかったが、奏音と話をしているとあっという間に感じた。
「着いた〜。どこから回る?」
「あ、あそこ行きたい。お化け屋敷」
「おっけー。じゃあ早速行くぞー」
「おー」
ノリノリで向かう私たちだったが……。
「きゃーーー!」
「うわああぁぁぁ!」
入り組んだ通路やあの手この手で驚かせてくる仕掛けに、2人とも叫び声が止まらない。
「はあ、はあ」
お化け屋敷を出た後の私は、恐怖に息が上がって奏音の体に必死にしがみついていた。
一方の奏音はさっきまで一緒に叫んでいたくせにお化け屋敷を出たとたん涼しい顔をしていて、私は悔しいような可笑しいような不思議な気持ちになった。
「美緒、次はジェットコースターに乗ろうよ」
「いいよ」
予想通りジェットコースターは少し混んでいたので、私たちはしりとりをして待つことにした。
ただのしりとりでも、奏音とすると心の底から楽しいと思えるから不思議だ。
「めんたいこ」
「コイントス」
「すし」
「――では、前から順に詰めて行ってくださーい」
ついに順番が回ってきた。
ジェットコースターに乗り込み、安全バーを下げる。
するとゆっくり進みだし、カクッカクッと徐々に坂を登っていく。
そして頂点まで上がると、焦らすように一瞬動きを止め……一気に急降下する。
「きゃああぁぁぁーーー!」
ふわっと体が浮く感覚を感じ、全力で絶叫する。
下りきったと思ったら今度は横にグイン、と方向転換する。そして休むまもなく今度は一回転。
そしてようやく終わり、最初の場所に帰ってくる。
「美緒、大丈夫?」
「うん、大丈夫。終わったと思ったら気が抜けてちょっとふらっとしただけ。一瞬だけど濃密な時間だった……」
「休憩がてら、そろそろ昼食にしようか」
「うん。そうする〜」
私たちは遊園地内にあるレストランで昼ご飯を食べた。
私はイカのパスタ。奏音は激辛ラーメンを注文した。
真っ赤で辛そうなラーメンをすする奏音の姿はなかなかに様になっていた。
奏音のことをじっと見ていたら、「少し食べる?」と一口分けてくれたけど、辛すぎて違う意味で絶叫しそうになった。
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