第6話 急加速する気持ち
私たちは公園まで無言のまま歩く。
ああ、奏音になんて言われるんだろう。あんな言い方で、はたして私の言いたいことは伝わっただろうか。
先程の自分を思い出し、私は羞恥でこの場から走って逃げ出したくなる。
だけど、今ここで逃げるわけにはいかない。
心の中でそんな葛藤をしていると、公園にたどり着いた。
私たちは示し合わせたようにベンチに座る。
すると早速、奏音が口を開く。
「美緒、俺の気持ちも聞いてくれる?」
私は奏音の顔をまっすぐ見ることができず、正面を向いたままうなずいた。
「実はさ、ずっと言おうと思ってたんだけど、俺も美緒のことが好きなんだ」
「っ……!」
思わず奏音の顔を見ると、その表情はいつになく真剣だった。
「私……も! 私も奏音のことが好き」
だけど、気づいたら私はそう言っていた。言った瞬間、全部腑に落ちた気がした。
「俺たち、付き合おう」
「うん!」
その日私たちは手を繋いで、喜びを噛みしめるようにゆっくり家まで歩いて帰った。
私たちが付き合い始めたのは火曜日で、今日は金曜日。ちなみに毎日手を繋いで一緒に帰っている。
そんな今日の帰り道、なんだか奏音がそわそわしていたので「どうしたの?」と聞くと、少し緊張した様子で答えが返ってきた。
「いや、もうすぐ俺たちが付き合い始めて最初の休日じゃん? だから、どこかに出かけたいなって」
「あ、そっか。そうだね。私も奏音と一緒にどこか行きたい!」
想像するだけで心が踊る。
「どこ行く? 近くだったら動物園とか水族館?」
「美緒はどこがいい?」
「う~ん、あ! 遊園地行きたい」
「良いね! 俺も遊園地行きたいし、そこに決定!」
「遊園地は小学生のとき以来かも」
「俺も久しぶりだな〜。二年前に大幅リニューアルしたらしいから、楽しみだね」
「そうなの? 知らなかった」
「明日、は急すぎると思うから日曜日に行こっか」
「そうだね」
「じゃあ明後日の朝、家まで迎えに行くよ」
「ありがとう」
奏音のその何気ない一言が、どうしようもなく嬉しかった。
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