回り切れない歯車はどこへ行けばいい?
田山 凪
私は歯車
羨ましい。
止まることを許された歯車が羨ましい。
なまじ回れるからこそ使われ、使われるからまた捨てられる。
壊れたならしかたない。捨ててしまおう。
回らないなら仕方ない。調整しよう。
とてもよく回るじゃないか。よし、採用しよう。
なんだこれは、やけにぎこちない回り方。
下手すりゃ止まるんじゃないか?
まぁいいや、ほかの歯車が来るまで使おう。
使い捨てですか?
回れる歯車は立派です。
私も目指しました。
壊れた歯車はもう使えません。
お疲れ様。
そうならないように努力しました。
回らない歯車はまとめられ修理されます。
そこに私は入れませんでした。
いびつなんです。
でも、ちょっと回れるんです。
遅いし、スムーズに動かないし、ほかにもっといい歯車はたくさんあります。
でも、いまはこれしかできないんです。
時間をください。
気づけば周りと触れることさえできないただの歯車となりました。
少しだけでいいんです。
見てください。
触れてください。
使えなくはないんです。
ああ、今日も勢い良く回る歯車が羨ましい。
それなりに回れる歯車が羨ましい
回らず修理される歯車が羨ましい。
自ら壊れることもできないから、いびつでも回ろうとするんです。
こんな歯車がいることを、忘れないで。
直してください。
内側は亀裂が入ってボロボロなんです。
それなりに回れる歯車、修理される歯車、どっちでもいい。
せめて、どっちかに私を入れてください。
箱にも入れられず、上手く回れない私は、どうすればいいですか?
回り切れない歯車はどこへ行けばいい? 田山 凪 @RuNext
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます