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 よくよく考えると、自分は先輩のことをどれくらい知っているんだろうか。洗いあがった洗濯物を干しながら考える。いつもはバイトの日にしか関わりが無い。年上たから仕方のないと、昔の自分なら諦めていたと思う。でも今は何かが違う。昔の自分なら考えもしなかったことを考えたりするし、年の差を感じる場面があると悔しいような悲しいような感覚になる。

 何もかもが初めての感覚で、とにかく忙しい。自分で自分に追いつけないみたいなときが最近は多い気がする。


「そういえば.....先輩って......」



 好きな人は、いるんだろうか。


 ふと感じた疑問。今までは人と関わることをあまりしてこなかったから、そういう話も自分には縁のない話だと思っていた。ふと気になったことも、時間が経つと忘れてしまっていた。


「今日....聞いてみよう、かな....」


 先輩に関してはどうも気になってしまうらしい。


 ✱✱✱


「よし....」


 来た道を戻って、今はまたお店の近くにいる。なぜなら今日は、一歩前に進む日だから。


「だいぶ日が長くなったな....」


 周りの景色は真冬の時期に比べて明るく、まだ空にはオレンジ色が残っていた。お店の中にいる二人は、何か楽しそうに話している。 どうやら片付けをしているようだった。


「あ....」


 片付けを終えた先輩がお店から出てくる。少し深呼吸をして、驚かさないように声をかける。


「お疲れ様です」


「あっ、お疲れ様.....じゃないか。こんばんは....かな?今日は本当によく会うね」


「そうですね」


 会話が続かない。いつもなら自分たちの他に、麻結さんやお店に来るお客さんがいるから話題には困らない。けれど今日は先輩と二人きり。何を話せばいいのか全く分からなかった。


「今日もいい天気でしたね。忙しかったですか?」


「んやー?いつもよりは.....あ、でも今日来てたお客さん日向くんに会いたがってたよ。」


「え?」


「この前途中まで荷物持って着いてきてくれて〜って。」


「あぁ、たくさん持ってたので心配で....」


「そっか、そういう優しいとこ私は好きだよ」


 今のは聞き間違いだろうか。女の子は、こうも簡単に好きを伝えることができるのか。それは、先輩がとてつもなく素直だからできることなのか。自分の中でたくさんの疑問が、浮かんでは消える。その疑問の中にほんの少しだけ、期待があることも自覚していた。ゆっくりと息を吸って、それを言葉にする。


「....それってどういう意味ですか?」


「....え?」


「その....好き、とか....誰にでも使うんですか?先輩って」


 少し遠回しな言い方になってしまったかもしれないけれど、今はこれが精一杯だった。


「えっ....えっと?」


「すみません.....でも、一つだけ聞いてもいいですか?」


「なに....?」


「先輩、好きな人とかいるんですか?」

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雪と陽の花 七瀬モカᕱ⑅ᕱ @CloveR072

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