2

 相談が終わったのは、お昼前くらいだった。バイトの話だけではなくて、その後たくさん話していたからまぁ仕方ない。


「よし...」


 お店が閉まるのは、午後六時。今は十二時だからまだかなり余裕がある。それまでどこかで時間を潰して、先輩が上がるのを待ってみようか。


「お腹空いた...」


 たくさん考え込んだからか、それとも時間のせいなのか...お腹がなって、思考が止まる。


「一旦帰ろう」


 一旦帰宅して、ご飯を食べて....時間になったらまたここに来よう。僕は今日、いつもより少しだけ勇気を出すと決めた。

 誰に言われたわけでもなくて、何となく今日は行ける。そんなき気がするだけだけど、僕にとっては大きな一歩。だと、思う。


 ✱✱✱


「お願いします。あっ、袋いらないです....」


 コンビニでおにぎりと飲み物を買って、駅前のベンチに座って食べる。バイトする日はいつもこうしている。帰ってからお昼を食べようとしていたけれど、家まで持ちそうになかった。駅前にはたくさんの飲食店があって、その看板なんかに載っているメニューをどうしても見てしまう。その結果、僕は空腹に負けてしまった。


「帰ろ」


 駅前でお昼を済ませて、駅の改札へ向かう。僕の家があるのは、この駅からふたつ戻った駅。たったふたつだけなのに、ここよりもかなり緑が多くて、時間の流れもゆったりしているように感じる。


「....やばっ」


 ぼーっと景色をみているとウトウトしてしまって、危うく寝過してしまうところだった。今日はとてもと暖かいから、どうしても眠気が来てしまう。テストばかりで疲れていたのもあるだろうけど、きっとこれは春の陽気のせい。


「眠い..」


 目を擦りながら列車を降りて帰りを急ぐ。別に急ぐことはないけれど、何となくソワソワするようなそんな感じがするのだ。


「大丈夫、多分....?」


 多分?と思ってしまうのは、勇気がまだ足りないからなのか。少女漫画に出てくる人気者のキャラクターなら、こんなにソワソワすることはないのかもしれない。そう思うと少し羨ましい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る