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 好きになった。とはいったものの、なかなか先輩と話せる機会を見つけられず半年以上が経とうとしていた。


「あっつ〜い。アイス〜...」


「あおいちゃんさっきそこの自販機で買って食べてたでしょ?てかまだ四月だよ?!もうアイス食べてんの?」


「力仕事したら暑くなりますもん...」


「さすがにお腹壊すよ....?」


 そんな可愛らしい会話が、お店の少し開いた扉の向こうから聞こえてくる。


「札、ひっくり返してきますね!」


 そう声がして、元気よく外に出てくる先輩。お店の前にあるプランターにささっと水やりをしている。相変わらず、先輩は手際がよくて憧れる。ふと先輩が、一つのプランターの前で立ち止まった。


「お、無事咲いたねぇ....。良かった....」



 そう呟きながら、白いチューリップの植わったプランターを嬉しそうに眺めている。プランターに向かって優しく微笑む先輩のことをみていると、本当に花がすきなんだろうと思う。そんな先輩の表情が、プランターを眺めるうちに少しずつ曇っていっているような気がした。


「....」


 それが心配で、少し近づいてみたけれど先輩は全く気づく気配が無かった。それが余計に心配で、僕は先輩に声をかけていた。


「あの....」


「....あっ、いらっしゃいませ!.....って、あれ?今日お休みなんじゃ......?」


「そうなんですけど....ちょっと相談が......」


「相談?麻由さんならお店の中にいるよ」


「はい、ありがとうございます.....!」

 、

 僕に気が付いて向けられた笑顔は、いつもと同じもので少しほっとする。とはいえ、先輩のあんな表情を見たのは初めてで.....自分の中に小さい引っかかりができてしまった。


 ✱✱✱


「お疲れ様〜」


「あ、お疲れ様です....。急にすみません」


「いやいや〜、大丈夫大丈夫!いつもありがとね〜...」


「いえ....」


「そんで〜?どうしよっか?」


「そうですね.....テストとかも落ち着いたので回数増やしても大丈夫だと思います....」


 その言葉を聞いて、麻由さんはニヤリと笑った。


「それも、だけどさ.....日向くん、好きなんでしょ?あおいちゃんのこと」


「え?!」


 僕の反応を見て、麻由さんは声を出して笑いはしめる。


「あははっ、日向くんってわかりやすいなぁ....。かわいいわ」


「ちょ.....!!も〜っ...」


 麻由さんは、エスパーか何かなんだろうか。人をよく見ている。というのはあると思うけれど、ここまで正確に言い当てられるものなのか?とも思う。


「まぁまぁ、私も協力するから!」


「なんですか協力って....」


「ん?言葉の通りだけど?」


「えなに、怖....」


「酷いな?!」


「ふふっ、嘘です」


「ちょーい!!」


 いつも振り回されているのは納得がいかないので、小さいながらも仕返しのつもりで言い返した。少し大袈裟じゃないか、と思うリアクションには驚いた。だけど、少し元気が出た。頑張ろう、と思った。

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