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 僕には今、好きな人がいる。それは、バイト先の一つ上の先輩。先輩は、明るく笑顔が素敵で、何でもテキパキこなせてしまうような人。自分には無いものを全部持っているような、そんな人だ。


「先輩、おはようございます」


「あ、日向くんおはよう!今日もよろしくね」


「はい!」


 こうやって、あまり人と話すのが得意ではない僕のこともきにかけてくれる。そんな先輩のことを好きになるのに、時間なんてかからなかった。


 ✱✱✱


「はい、気をつけて持ってくださいね。はーい、またお待ちしていますね!」


 その日もとても忙しい日で、お店の人全員があちこち動き回っていた。


「日向くんってさぁ、かわいいよね。パッと見女の子みたいだもん」


「あ、はぁ......」


 忙しさが一段落して、隣で作業していた麻由さんが話しかけてきた。僕は痛いところをつかれたと思ったけれど、これはいつものことなのであまり気にせず、愛想笑いで聞き流す。いつものこと。そう頭の中で繰り返して、自分の感情に蓋をする。


「麻由さーん、やめてあげてくださいよ〜。日向くんはちゃんと男ですよ!!すっごい力持ちなんですから!」


「分かってるよ!でもごめんね、またやっちゃった.......」


「麻由さんのそういうとこ、ほんとよくない」


「ほんとすみません....」


 下を向いて作業していると、そんな 会話が聞こえてくる。今までは、こんな状況になっても、止めてくれる人なんていなかった。だから、自分のコンプレックスである部分をよくからかわれていた。


「麻由さーん!これ終わりました!」


「んお!相変わらず速いね〜、後は私がやるからもう終わりでいいよ〜日向くんもね!!」


「え!!やったぁ!!アイスゆっくり食べられる〜!!ほら、日向くんも!!はやく!!」


「えぇ?!あっ、はい....」


 明るくて優しいだけじゃなくて、コロコロ表情が変わるところもとてもかわいいと思った。年下にかわいいと思われるのは嫌かもしれない。そう思った僕は、この気持ちをしばらくは自分の中だけにしまっておくことにした。


 今思えば、僕はこのときから先輩のことを特別だと感じていたのかもしれない。

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