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お昼からの時間はあっとゆう間だった。元々今日はいつもよりお客さんも少なかったけれど、午前中より午後の方が時間の進み方が早い気がする。
「お疲れ様〜!あと片付けは私がやっておくから暗くなる前に帰りなね!」
「えっ、でも...」
「いーのいーの!いつも頑張ってくれてるし、それに....」
麻由さんは、お店の出入口の方に視線を向けて微笑んで言葉を続ける。
「待ってくれてる人も、いるみたいだし...?」
「え.....?」
私は意味が分からずに、麻由さんの視線の先を見た。そこには、扉を背にして日向くんが立っていた。
「なんで?!」
私が驚いていると、麻由さんはイタズラが成功したときの子供のように笑って『さぁ?』と口を動かした。麻由さんは時々、何がしたいのか分からないときがある。いい意味でも悪い意味でも、麻由さんのイタズラには毎回驚かされる。けれどそのイタズラがあるおかげで、毎日飽きずにここでやっていけている。
「あのほんと....今回はなんでまた?いつも私、これくらいの明るさなら一人でも大丈夫ですよ...?というか、冬場で暗くても普通に一人で.....」
私がそう言うと、麻由さんは小さくため息をついて明らかに落ち込んだ顔になる。今回も本当に何がしたいのか、まるで分からないけれど...今私がここで麻由さんのイタズラに乗らずにいつも通り帰ると、なんとなく悪い気がした。麻由さんなりに何か考えがあることは確かなんだろう。
「わかりました。それじゃあ、お言葉に甘えてお先に失礼します」
「ん、じゃーまた明日!」
そう言って私を見送る麻由の表情は、明るいものに戻っていた。
「ほんと...なんだったんだ....?」
帰る支度を済ませて、お店を出る。モヤモヤと考え事をしながら、帰り道を歩いていると後ろから『お疲れ様です』と声をかけられる。
「あっ、お疲れ様.....じゃないか。こんばんは....かな?今日は本当によく会うね」
私が少し慌てたように言うと、日向くんは『そうですね』と微笑む。この笑顔をることも、私のちょっとした楽しみであることは自分以外誰も知らない......はずだ....多分。
「今日もいい天気でしたね。忙しかったですか?」
「んやー?いつもよりは.....あ、でも今日来てたお客さん日向くんに会いたがってたよ。」
「え?」
「この前途中まで荷物持って着いてきてくれて〜って。」
「あぁ、たくさん持ってたので心配で....」
「そっか、そういう優しいとこ私は好きだよ」
私がそう言うと、日向くんは驚いた顔でこちらを見て固まってしまった。私は何か、やばいことでも言ってしまったのだろうか。
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