消えた深夜
翌週。夜暮の実験により、深夜が消えたことが確認された
眠った舞夜に踏切の音を聞かせても起きず、起きても舞夜が起きるだけ
裏コード発動のために必要だったことを試しても一切発動せず、夜暮は平穏な日々を送っていた
(…物足りなくはあるが)
笑顔で服を選ぶ舞夜を見ながら、そう感じて腕を組み悩む夜暮
別段深夜を好きだと感じた記憶はない
実際自己診断の結果、心から愛しているのは舞夜だと理解している
しかしそれでも、足りないのだ
「どうしたの?」
「…いや、深夜がいないと暇だな…と」
「うーん…私の裏人格だった人でしょ?」
舞夜は夜斗の謎技術により、深夜に関することを忘れていた
それのせいか最初は全く話が合わず、夜斗に問い詰めた結果深夜を消した反動だとわかったのだ
「ああ。あのお転婆娘、来世では幸せに生きるといいが」
「私の不幸体質が移ってなければ、だけどね」
舞夜に残されたのは連続殺人事件の犯人だという世論と夜暮だけだ
深夜がいない以上、舞夜自身がなにかに挑むことはないだろう
深夜が消えたことを知った真桜は部屋に塞ぎ込み、舞夜はそれを慰めることすらできないのだから
「…夜斗も中々、本当に意味のわからん奴だ」
「悪かったなこのやろう」
「うおっ!?」
「あ、夜斗さん。こんにちは」
「ああこんにちは」
夜暮は背後から声をかけられて仰け反り、舞夜は冷静に挨拶を交わしていた
そして背後を歩くゴスロリ少女に目を向ける
「誰だ?」
「俺の後輩だよ。一応教師の任期が今年度までだし、その後こいつ育てるつもりだ」
「はじめまして、ですわね。黒淵夜暮様」
「お、おう…。随分とお嬢様だな…」
スカートをつまみ上げて一礼する少女に目を奪われる夜暮
それに気づいた舞夜が脇腹をつねり、痛みに悶絶する
「こいつは
「ああ…。たしかに、女と常に一緒だと嫉妬しそうだ」
夜暮はそう言ってからふと舞夜に目を向けた
どうやら夜架と気が合うらしく、初対面だと言うのに笑顔で話している
「夜架、次行くぞ」
「舞夜も、続きに戻ろう」
「セッカチですわねぇ…。かしこまりましたわ。では、また」
「またね、夜架さん」
離れていく夜架と夜斗に手を振り、見えなくなってから手を下ろす舞夜
「気が合うのか?」
「うん。なんか、初めて会った気がしないんだよね。けど顔は知らない。ネットで知り合った人に似てるかも」
「そういうこともあるのか、現代では。難しい時代だ」
「まるでおじさんみたいなこと言うよね」
「そう言われても仕方のない歳ではあるかもな」
そう言って買い物に戻る夜暮と舞夜
そんな2人をかなり遠方から見つめる夜架
「どうだった?」
「気づかれませんわね、意外と」
「口調も容姿も違えばそうだろ。舞夜さんに至っては会ったことないわけだし」
「…そうね」
つまらなそうに肩をすくめる夜架
その目に宿る光は強い
「まぁいいわ。また会いましょう?夜暮、そして舞夜」
「トラブルになるから勘弁してくれ…」
今度こそ夜斗と夜架はこの場を去っていった
殺人姫の嫁ぎ先 さむがりなひと @mukyo
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