第二十話 バ、バカな!
「なんでこの場面で出てくるんだよ」
ユウダイたちが騒ぎ立てた。
俺もゲームで見覚えがある。確かに冒険の序盤で出てくるような敵じゃなかった。
まあ、でも今更だな。
主人公の皇子たちが兵士を引き連れて俺たちの前に立ちはだかっている状況からして、すでにゲームにはない展開だし。
もはやシナリオは、大きく変わっているのだ。
「四天王? 何を言っておる。ワシは魔族三幹部の一人。謀略道士グリムウィッチよ」
そういえば、闇属性のレイヴァンスが四天王の一人になるんだよな。
まだ闇落ちしていないから、今のところ三幹部なわけだ。
四天王にならないよう、気をしっかり持たねば!
シナリオがこうも大きくずれている以上、これからも何が起きるか分からないぞ。
「ほう。情報どおりだな。ミスティローズブレイドを持った者がおるではないか。しかも、ブレイドの所有権を持った他の三人もおる様子。キッヒッヒ! こいつはついとるのう」
おそらくミスティローズブレイドを持つことができるのは、俺を含めたユウダイたち四人。
ユウダイたちはミスティローズに嫌われちゃってるんだけど、それでも剣の所有者になり得る。
だから、早いうちに勇者パーティーを全滅させようって魂胆なわけか。
さらにセレナの確保も、狙いに含まれているはずだ。
魔族たちの目的が、すべてこの場に集まってしまっている。
「おい、おまえら! あいつらを何とかしろ」
ユウダイが兵士たちの背中を押し、自らは後ろに下がって兵士たちの陰に隠れた。
自分たちも標的だと知って、焦ったらしい。
「無事か、レイヴァンス!」
魔族たちを斬り倒しながら、オリヴィアが駆けつけてくれた。
「オリヴィアさん、俺はあのグリムウィッチという魔族を引き受けます。あいつを倒すには、ミスティローズブレイドが一番効果的だ」
「わかった、雑魚どもは任せろ。聖王都の兵士団もいるし、なんとかなる」
役割分担が決まり、俺たちは動き出した。
謀略道士グリムウィッチ。
確か魔術や幻術を得意としている中ボスだ。
状態異常などの魔法には特に要注意だが、ミスティローズの霊属性はそういった類から身を守る魔法も多い。
だからこそミスティローズブレイドを持つ俺が、この魔族を倒すのに向いているのだ。
「おお、怖い怖い。おまえたち、ヤツを止めろ」
ミスティローズの特性を理解してかは知らないが、グリムウィッチが部下の魔族たちをけしかけて俺から遠ざかっていく。
襲ってくる魔族を相手にしていると、遠方から魔力の塊のような球が飛んできた。
周囲の空間が歪んだように見えたかと思うと、大爆発が引き起こされた。
「キーッヒッヒ! どうだ。わしの最強魔法! 勇者といえど、ひとたまりもあるまいて」
勝ち誇っているようだが、俺はミスティローズの霊属性による魔法防御でガードすることができていた。
爆発の煙が晴れたときの、最初に言うヤツのセリフは「バ、バカな!」だ。
今の攻撃で分かった。
ミスティローズと俺のタッグなら、圧倒的にグリムウィッチより戦力は上だ。
もっとも、他の四天王に「四天王最弱のグリムウィッチを倒したくらいでいい気になるなよ」なんてお約束のセリフを言われてしまうようなやつなんだが。
それにしても、部下の命もおかまいなしか。
そういうキャラだってことは知っていたけど、実際に見ると本当にひどいな。
煙が晴れていき、やつの姿が見えてきた。
「バ、バカな!」
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