第7話 再びバイク屋さんへ行ってみた

 昨日お邪魔したバイク屋さんに、朝一番から再び行ってみた。


 店の奥で何かの作業をされていた、見た感じちょっと頑固そうな店員さん(ひょっとしたら社長さん?)に声を掛けると、すぐに買取査定担当の別の店員さん(おそらく社長の息子さん、といったところ)が来てくれた。


 父のリトルカブを相続する上で、相続税の根拠となる(であろう)買取査定額の算出をお願いしたいと言ってみたところ、店員さんの回答はこうだった。


「バイクの価値を『市場価格』で計算するのか『買取価格』で計算するのかによって金額が変わってきますが、相続の手続き上でどちらの金額が必要と言われていますか?」


 つまるところ、相続税の手続きを進めるに当たって専門家の方(今回の場合、おそらくは税理士)から、第6話で書いた「売買実例価額」と「精通者意見価格」のどちらを求められているのか、といった話だった。


 また、そのバイク屋さんが出した買取査定額だけをもって、父が遺したリトルカブの時価額と言っても大丈夫なのか、専門家の方はその辺りについて何と言っているのかとも聞かれた。


 例えば、そのバイク屋さんが計算した父のリトルカブの「精通者意見価格」が仮に5万円だったとして、別の買取業者で計算してもった価格が7万円になるような場合、どちらの金額をもってリトルカブの時価額と考えられるのかといった部分にも考慮が必要になるらしい。


 名義変更の時と同じく、僕の悪い癖の一つ「フライング」である。ああじゃないか、こうじゃないかといった自分の憶測だけで事を進めてしまっていて、本当にその手法で良いのかどうかの確認が取れていない。これでは全然駄目だろう。場合によっては、かけた労力とお金が無駄になってしまう。


 というわけで、相続の手続きをどのように進めていくかについて、二週間後に専門家へ相談する予定なので、リトルカブの時価額を計算してもらう話はいったん置いておくことにした。


 そこで今度はリトルカブの現状(ひとまずはタイヤを駆動するためのチェーンと、エアクリーナーの状態)について、一度見て欲しいという話を相談してみた。


 約20年選手のリトルカブ。いくら元エンジニアの父が乗っていたとはいえ、さすがにチェーンの張り具合の調整やエアクリーナーのチェック(リトルカブの場合、泥よけを外してからでないとチェックが出来ないらしい)などといった、少々手のかかりそうなメンテナンスを自力でしていたとは考えづらかったし、以前世話になっていたお店でどこまでのレベルのメンテナンスをしてもらっていたのかもよく分からない。


 こちらに関する店員さんの回答は、こうだった。


「チェーンやエアクリーナーをそれぞれ単体でチェックするよりは、少しお金はかかりますがいっそのこと12ヶ月点検をしてもらった方が、トータルで考えれば安く上がるかも知れませんよ」


 ちなみに12ヶ月点検であれば、チェーンやエアクリーナー以外にも、スパークプラグやブレーキなど、バイクのその他の部分の点検も併せてしてもらえるとのこと。工賃は1万円弱で、交換が必要な部品があればその部品代が費用に上乗せされる。


 学生時代には郵便局の配達のアルバイトを複数年に渡って経験し、その時に乗っていた原付カブ(こちらはMDシリーズ、通称「郵政カブ」と言うらしい)のことを思い出しても、現状リトルカブに大きな問題があるようには見受けられなかったのだが、何度も言うが、なにせ約20年選手のバイクである。


 原付には車検がない分、乗り手のメンテナンスに対する意識がバイクの状態に大きく影響してくると言える中、せっかくリトルカブを乗り継ぐのであれば一度きちんと点検してもらった方が良いのかも知れない。


 そう思った僕は、一週間後に12ヶ月点検の予約を入れてお店を後にした。未だに「やらなければいけないことの順番」がバラバラになってしまっているような感じなのだが、ひとまずはやっておくべきこと、やっておいた方が良いことを一つずつ片付けていこう。


 それにしても、これが自動車の話であれば僕にも多少は経験や知識があるのだが、原付とはいえバイクの話になると分からないことが多すぎる。自分にスキルや知識、経験がない分、色々とお金がかかってしまうのは致し方がないのだろう。

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