第6話 バイク屋さんへ行ってみた

 ひとまず名義変更を終えてしまったリトルカブ。新たな任意保険の加入を済ませ、父が5年払いで遺してくれた自賠責保険の名義変更手続きを進めているところなのだが、これと併せて本来の相続手続きも進めていかなければならない。


 先にも述べたとおり、リトルカブを僕が相続することについては、他の相続人(母と妹二人)とは既に合意が取れている。こちらで何かもめ事が起こるといったことは、それこそリトルカブが超レアバイクで、もの凄い高値で売れるようなことでも無い限りはあり得ないだろう。


 とは言え、そもそも母が父の遺産を相続するための「遺産分割協議書」の作成が必要となるし、これと併せて父の遺した財産の「財産目録」の作成なども必要になるはず。そして、これらの書類の中にはリトルカブに関する記載も必要になってくることだろう。


 小難しい書き方をしてしまったが、要は「時価額○○円のリトルカブを僕が相続する」という文言が入った書面を作り、そこに各相続人の署名と実印を押す必要があるのだ。面倒と言えば面倒な話だが、必要な手続きはきちんと行っておかなければなるまい。


 あと、古い原付とはいえど財産を相続するので、相続税も発生することが考えられる。相続税の計算や税務署への届出などについては専門家に相談・お願いする予定なのだが、そのためにはリトルカブの金銭的価値を調べる必要もあった。


 という訳で、簡単に言えばリトルカブの買取査定額を調べる必要が生じてきた。


 インターネットで調べた限りでは、この金額の調べ方にはおおむね「売買実例価額」を調べる方法と、「精通者意見価格」を調べる方法の2つがあるらしい。


 「売買実例価額」とは、例えばG○○バイクなどのインターネットサイトで掲載されている同程度の年式、走行距離のリトルカブの価格のことを言うらしい。しかしながらこの価格には、当然のことながら中古バイクを販売する店の利益も含まれているため、相続税の計算根拠とするバイクの価値(金額)はその分だけ高くなる。


 一方「精通者意見価格」とは、中古バイクを買い取ってもらう際の買取金額のことを言うそうだ。この金額を調べるためには、バ○ク王などといった買取専門の業者に買取査定を行って貰う必要があるのだが、こちらの方がバイクの実際の価値がよく分かるし、相続税の計算根拠とする金額についても安くなる。


 僕がどちらを選ぶべきかは、一目瞭然だ。当然「精通者意見価格」を調べる方法である。


 しかしながら、今度は「買取査定額を誰に計算してもらうのが良いか」で悩んだ。僕の住んでいる地域で考えると、中古バイクの買取を行っているお店はレッ○バロン一択になってくるのだが、「実際には売るつもりのないバイクの買取査定をお願いするだけ」というのが、どうにも気が引ける。ましてや遠方の買取業者に出張査定をお願いするとなると尚更だ。


 ということで、先々リトルカブのメンテナンスをお願いしようと思っていた地元のとあるバイク屋さんに行き、買取査定額を計算してもらえないか聞いてみることにした。


 ここ四半世紀ばかり、バイクからは縁遠い生活を続けていたため、初見の店にお邪魔することになる。父が整備の世話になっていたお店は「日曜日と祝日は休み、土曜日も月の半分は休み(しかも不定休)」だったため、いずれにせよ僕が休みの日に安定して通うことが出来るお店を新たに探す必要があったのだが、出来れば整備の腕と愛想の良いお店を選びたいところ。


 くだんのバイク屋さんに行くと、何故か大阪ナンバーのキンキラキンのビッグスクーターが店の前に停まっていて、そのオーナーさんと若い店員さんが話をしていた。大阪からは随分と距離がある片田舎なのだが、そんな遠方からもお客さんが来ているのだろうか。


 店員さんがお客さんとの話を終えられたタイミングを見計らって挨拶し、事情を説明してみたところ、返ってきた返事はこうだった。


「買取査定の計算は出来ますが、今その担当者が出張に出ておりまして……本日の夕方になったら帰ってくるのですが」


 あいにくと夕方には予定が入っていたため、明日の朝一番に再度お邪魔する方向で話がついた。ついでにリトルカブの気になっていたところについて、点検のお願いもした。店員さんの第一印象も良い感じで、まずは一安心。


 今のところ、話の続きは明日の朝にお店を再訪してからになるのだが、はてさてどんな結果が待っていることか――次回、乞うご期待!

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