第10話 思いもよらぬ里帰り2
「ゔぁー、気持ちいい……」
なんでかね、温泉に浸かると変なとこから声出るの。
「ロッティ、親父臭いな」
「だって気持ち良くない?つい声でちゃうんだよ」
気持ち良くて声出すとか、しばらく……ここ十四年ないわぁ。もちろん変な意味で!
「あ、一応脛毛生えてる」
「当たり前だろ、男なんだから」
あまりに美形だから、ムダ毛なんか一切なくて全身ツルツルかと思ったよ。ほら、少女漫画のヒーローが髭なんか生えませんみたいな顔してるのと同じでさ。
でも、うっすいけどちゃんと脛毛も生えてるし、よく見ると顎のとこにプツプツと髭らしきものもあるような、ないような。男性ホルモンの塊みたいなダニエル王の息子のわりにはツルンとしている方だけど、やっぱり男の子なんだね。
私は髭モジャでもツルツルでもどっちも気にならないタイプ。たまにいるじゃん、胸毛が好きとか、逆に許せないとか。毛なんかね、生えてようが生えていまいがどっちだっていいのよ。問題はアッチの相性だからね。
「ロッティは足ツルツルだね」
「そうなんだよね。全身的にツルツルよ。ムダ毛処理入らずでいいんだけどさ、せめてアソコにだけは毛が欲しかったよね。なんか脱いでも子供なんですって感じで、一部マニアには絶大な人気かもだけどさ。アダム様は、やっぱり見た目子供だとその気にならない?」
「え?いや?なんのこと?」
アダムは私の足、顔、股間を往復して見る。なんのこととか言って、ちゃんとわかってるじゃん。
「ほらさぁ、アダム様は女性恐怖症な面もあるから、私のこと女として見てないかもしれないけどさ、毎晩一緒に寝てるのに全くなんもないじゃん?私がこんなんだからかなぁって、やっぱり気になっちゃう訳。一応結婚できる年なんだし、私的にはいつでもウエルカムなのよ。むしろカモンって感じ?このまま一年、二年、三年とかたっていくのかなって思ったら、ちょっと考えちゃうよねー」
アダムのことは気に入っている。ハイスペックな癖に根暗な感じとか、逆に可愛いなって思うし、なによりアダムの手!ムラムラしちゃうくらい超好みなんだよね。髪の毛結ってもらってる時とか、髪の毛を指先で分けられるだけでゾクゾクしてきちゃう。この器用な手に啼かされたい!って、常に欲情してるんだけどさ、私がアダムを襲っちゃったら、女性恐怖症がさらに酷くなるかもじゃん?だからグッと我慢してるのよ。
いまだにハグもキスもないんだよ?
結婚してから一ヶ月ちょい。三年なんもなかったら、白い結婚とかで離婚可能なんだったっけか?この世界でもそういうのあるのかな?離婚はなるべくしたくないんだけどさ、三年なんもないとか、私が我慢できる気がしない!
私はハァッとため息をつくと、軽く足を揺らして泉に波紋を作る。バタ足したら大惨事だからしないけどさ、本当はジタバタしたい気分なのよ。
「……考えるって、なにを?」
「私にもさ、性欲ってものがある訳。その発散方法」
「発散……」
★★★アダム目線★★★
いかにも子供のような見た目で性欲など無縁ですという顔をしているのに、たまに見せる大人の表情にドキリとする。
何も知らない子供だからあけすけに性について口にできるのかと思えば、何でも見通しているようなことを言ったり、大きな目でジッと見られると引き寄せられそうになり困る。
今だって、ユラユラ揺れる白い足や、引き締まった足首が妙に目について、ついでにさっき思いもよらず仕入れた情報が頭の中で何回もリフレインされて、妄想となって見えてくる始末。
僕って変態だったのか?!
いや、目の前にいるのは間違いなく僕の妻なんだから、妻の裸……とか想像するのは悪いことじゃないよな。
この人生になってから、僕の中で性とは忌避するものになっていたというのに、シャーロットと会ってからは身構えることがなくなった。多分、シャーロットとならば抱き合える気すらしてきた。洋服を着た上でだけど。
「ロッティは……性欲発散させたり……その、経験はあるのか?!」
「経験?Hのこと?」
シャーロットはケラケラ笑う。
「やだなぁ、ある訳ないじゃん。一応王女だったんだよ。バリバリの処女だから」
「そう……だよな」
「そうそう。でもさ、知識は沢山あるよ。興味もあるからさぁ。でもはまったら無茶苦茶はまる自信しかないから、パートナーは絶倫神テク夫がいいなって思ってたんだよ。だから、アダムパパリンとの縁談も立候補したんだけどさ」
そうか、彼女は最初、陛下の後宮に入る予定でリズパンに来たんだった。
なにか胸の奥がモヤッとする。
「自分から立候補したのか。年の差とかは気にならなかった?」
「全然。そりゃヨボヨボのおじいちゃんじゃ、心臓発作起こされちゃいそうで困るけど、見た目だけならアダムパパリンならアリ寄りのアリじゃん」
自分の妻が、自分の父親のことを「アリ」とか、モヤモヤがさらに大きくなる。
「なぁ、ロッティ、君は陛下に恋していたの?僕が夫になって失望した?」
シャーロットだったら、忖度することなくケロッと本当のことを話すだろうと、僕は恐る恐る聞いてみた。
「恋?してる訳ないじゃん。会ったこともなかったんだから。私は絶倫神テク夫が欲しかっただけ。アダム様は……失望しようがないかな。だって最初の評価が無から始まってるもん。二人で神テク開発していく楽しみはあるんじゃない」
なんだろう、このどうしようもない下品な内容の会話が、すんなりと耳に入ってくる感じ、誰かを彷彿とさせるような……。
というか、絶倫神テクって、前世の僕の恥ずかしい二つ名だからね。
無からの出発か……。まぁ減ることないからいいのかな。とりあえずは加点を目指してみるとしよう。
「そろそろ出発しようか、ヤンのことも気になるし」
「あいつはマロンに蹴られても生き残った奴だから大丈夫。きっと今頃うちの王宮でスチューが獲ってきたお肉でも食べてるわよ」
「だといいけど」
僕はシャーロットを抱き上げて立ち上がると、苔が生えた岩肌の上まで彼女を運んだ。
「力持ちね」
「そりゃね、これでも一応騎士団の訓練も受けているからね」
岩肌に座らせたシャーロットの足をハンカチで丁寧に拭いていく。足の指の間を拭いた時に、シャーロットの足が微かに震えた。
「そんなことまでしなくてもいいのに」
吐息交じりのシャーロットの声は、この生を受けてから初めて僕の情動に働きかけた。
つまりは、まぁ、起きている自分に起こった初めてのそういうことで……。
僕ってまさかの足フェチ?!
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