第5話 依頼受注

 俺は依頼を受けるためにカウンター横の掲示板に向かった。

 そこには依頼が書かれた紙がたくさん貼り付けられている。

 魔物討伐から薬草採取など、色々なものがあった。


 とりあえず薬草採取の依頼を受けようか。


 薬草採取は新参冒険者の大半が一度は通る道だ。

 薬草が採れる場所は決まっていて、魔物は出没するものの非常に弱い。

 冒険者になりたての人は薬草を採取しつつ、そこに現れる魔物を討伐する。

 これが鉄板の新参冒険者の生き方だと、元冒険者の父が昔教えてくれた。

 あの頃の父さんは恰好良かったのにな‥‥‥。


 ダメだ。今はそんなことを考えている場合じゃない。

 今日泊まる分のお金を用意しなくてはならないのだ。急ごう。

 

 俺は薬草採取の依頼を手に取る。


~~~~~~~~~~

パルト草原に生える薬草の採取


◆依頼内容

パルト草原にだけ生える毒消し草を集められるだけ集めてほしい。

一面緑の草原だが、稀に黄色い花びらを持つ植物がある。

それが毒消し草だ。沢山集めてくれることを願っている。


◆魔物の情報

パルト草原に主に生息する魔物は

緑狐グリーンフォックス 緑狼グリーンウルフ 緑兎グリーンラビット の3種だ。

どれも擬態に適した魔物だ。奇襲には気を付けてくれ。


◆報酬

毒消し草1本につき、50シルバー支払う。


◆依頼主

ラピ・シルバニア

~~~~~~~~~~


 安い宿だったら多分500シルバーくらいで泊まれるから、最低10本は集めなきゃな。

 そう意気込み、俺は依頼書を受付嬢に渡す。


 「この依頼を受けたいのですが、大丈夫ですか?」


 「かしこまりました。冒険者ライセンスをお預かりしてもよろしいですか?」


 「どうぞ」


 「ありがとうございます。依頼の受注は完了しました。それではご武運を」


 冒険者としての初めての依頼だ。精一杯努めよう。


 パルト草原は、ベントロルに来る前に俺がギフトを試した場所だ。

 道もわかるし、かなり都合が良い。

 それじゃあ向かうとするか。



************




 さっきと同じ光景だ。

 ちゃちゃっと、10本集めて町に帰ろう。


 俺は毒消し草の捜索を開始する。


 「黄色の花びらだっけか」


 目を凝らして探すが、意外と見つからない。

 このままだと夜までに最低ラインの10本にすら間に合うか微妙だ。


 「お、これはもしかして!」


 黄色い花びらを持ち、思ったよりも小さいフォルムでほのかに刺激臭をふりまく植物が足元に生えている。

 おそらく例の植物だ。

 運が良いことに3本ほど、隣り合って生えていた。


 開始約10分で3本は上出来だろう。


 「この調子で頑張るぞー」


 その時だった。


 ガルルルルルッ!


 突然、魔物のうめき声が聞こえてくる。

 しかもこの感じは俺の方に向かってきている。


 「これは、ヤバいな‥‥‥」


 能力を付与したアイテムを袋から出す余裕もなさそうだ。

 俺は声が聞こえてくる方と逆の方向に走り出す。


 だが、当然速さで勝てる訳が無い。

 無慈悲にも声は近づいてくる。


 その時だ。


 「あっ」


 俺は突然、浮遊感を味わう。

 それと同時に落ちていく。


 そして地面に強く衝突した。


 「痛ったぁ‥‥‥」


 顔を上げると、そこにはたくさんの狼がいた。


 「これは終わったかもな‥‥‥」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る