第4話 冒険者登録

 大きな扉を開けると、そこには屈強な体の冒険者たちがたくさんいた。

 冒険者ギルドの中に入るのは初めてだ。俺はあたりを見回す。


 ギルド内は、あたり一帯シンプルな木目調で覆われていて、落ち着く印象を受けた。

 入って正面には冒険者登録や依頼を受けるカウンターがあり、その隣には酒場が併設されている。

 依頼をこなして、報酬を手にした冒険者たちが、そこで一杯交わすのだろう。


 一通りギルド内を見終わった俺はカウンターに向かう。


 「すいません、冒険者登録をしたいのですが」


 「かしこまりました。お名前いいですか?」


 「ルーク・クルトです」


 「ルーク様ですね。それでは、こちらのお部屋へどうぞ」


 受付嬢に案内されるがままに、俺は部屋へと向かった。


 「こちらにおかけになって、お待ちください」


 俺が案内されたのは、椅子と机だけが置いてあるこじんまりとした部屋だった。

 初めてこういう場所に来たからか、緊張で体が震える。


 ここまで来れたのは良いが、ギフトについて聞かれたらどうしようか。

 自分から呪われているギフトと言えば、頭がおかしい奴だと思われて追い出される可能性がある。

 かといって、呪いのことを黙秘しておいて後からバレたら更に問題になりそうだな。

 正直、八方塞がりだ。


 「すみません、お待たせいたしました。今回、ルーク様の冒険者登録を担当させていただきます。フーラと申します」


 頭を悩ませていると、俺の冒険者登録を担当してくれる女性がやってきた。


 俺は軽く会釈をする。


 「じゃあ早速ですが、始めていきましょうか」


 「よろしくお願いします」


 冒険者登録をするための質疑応答が始まった。




************




 年齢や出身地、戦闘経験など、かなり詳しく経歴などを問われた。

 肝心のギフトについては、まだ聞かれていない。

 だが、そろそろだろう。


 「では最後に、ギフトだけ確認させて頂きますね。こちらの水晶玉に手をかざしてください」


 「分かりました‥‥‥」


 とうとう来たな、この時が。

 ここで呪われたギフトと表示されてしまったら俺は終わりだ。

 何かの奇跡で呪いとバレないでくれ!


 俺は震える手を水晶玉に近づける。



 ーーーパリィン!



 水晶玉が突如、粉々に砕け散った。


 「『え?』」


 想定外の反応に、俺とフーラさんの声がシンクロする。


 「しょ‥‥‥少々お待ちください! 多分、今使った水晶玉は壊れていたみたいです! 新しいの持ってきますね!」


 壊れていたということはおそらく無いだろう。

 もし壊れていたら、今まであれでどうやって他の人のギフトを調べてきたんだ。

 だが、水晶玉が壊れるということなんてあるんだな。

 にわかには信じがたい。


 「ハァハァ‥‥‥。お待たせいたしました! もう一度お願いします!」



 ーーーパリィン!



 「すみません、もう一度!」



 ーーーパリィン!



 「最後に一回だけ、お願いします!」



 ーーーパリィン!



 「ど、どうしてなの。こんなこと今まで無かったのに‥‥‥」


 「ははは‥‥‥。なんかすみません‥‥‥」


 とっても気まずい。俺は苦笑いで対応する。

 フーラさんのとても綺麗な顔が水晶玉が割れるたびに、どんどん歪んでいった。

 本当に申し訳ない。

 

 「取り乱してしまってすみません。私もこんな状況は初めてで、どうすればいいのか分からなくて‥‥‥」


 俺もここまでくると、どうすればいいか分からない。

 誰か、この気まずい空間から早く出してくれ‥‥‥。


 「はぁ‥‥‥。本来だったらありえないのですが、今回だけは口頭でギフト確認させてもらいます。特別ですよ」


 「本当ですか!」


 なぜこうなったのかは、よくわからないがラッキーだ。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。

 有難く、嘘をつかせてもらおう。


 「俺のギフトは能力付与です!」


 「かしこまりました。こちらが冒険者を証明するライセンスとなります。無くしてしまった場合は再発行料が掛かりますのでお気をつけ下さい」


 「ありがとうございます!」


 「今回のことは異例なので周りの方には極秘でお願い致します。それではご武運をお祈りしています」


 理由は分からないが呪われたギフトの存在をバレずに登録することが出来た。

 これも呪いの力なのかもしれない。

 まぁ終わったことだし、どうでもいいか。

 冒険者になることが出来た今、俺のやることは明確だ。


 「依頼受けに行くか!」

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