第2話 ギフトを使ってみる

 早速だが、俺は故郷を追放されてしまった。

 しかも、魔物がいる草原に無一文で。


 「なんでこうなっちゃったかなー」


 俺が村を出るとき、最後に見たラークの顔はとても幸福に満ち溢れていた。

 やっぱり、あいつは俺のことが嫌いだったのだろう。

 追放は言ってしまえば、実質の勘当宣言だ。

 もう俺が家族と仲良くする未来は、ほぼ無いだろうな。


 まぁそれは一旦置いておいて、今するべきなのは現状の把握だ。


 無一文の俺には、お金を稼ぐ必要がある。

 考えられるお金の稼ぎ方は3つだ。


 1つ目は、町に近いところで冒険者たちの武器に能力を付与してお金を貰うという方法。

 だがしかし、俺のギフトはまだ未知数。

 その上、他人の武器を破壊してしまうリスクもある。

 この案はギフトを試し次第、もう一度検討し直す必要があるだろう。


 2つ目は、かなり現実的な案で、冒険者になることだ。

 冒険者とは、いたるところに存在している魔物を討伐したり、ダンジョンという魔物の巣に挑んだりして、手に入れた素材を売却し、お金を稼ぐ人たちのことを指す。

 素材には、魔物を倒して手に入れた魔石や、植物など色々とある。

 1つ目の案よりは幾分もマシだな。


 3つ目はギフトの良し悪しに関係しない仕事に就くことだ。

 高い収入は見込めないが、生活は安定する。

 だが、呪われたギフトを持っている人間なんて雇うだけリスクだ。

 普通にいけば、雇ってくれないだろうな。


 ここまでいくつか選択肢を挙げたが、それも今から試すギフト次第で全て変わる。


 「頼むから良いギフトであってくれよ‥‥‥」


 俺は心の中で「ギフト!」と唱える。


 すると、目の前に半透明の窓のようなものが開いた。


――――――――――――

【能力付与 ‐呪‐】

自分が対象と認識した武器やアイテムに能力を与えることが出来ます

能力付与をする際に魔石を使った場合、よりよい能力を得ることが出来ます


このギフトは呪われている為、失敗することがあります

失敗した場合、武器やアイテムが消滅します


保有CP 0

*CPが足りないので情報を完全に見ることが出来ません

――――――――――――


 「理屈はよく分からないが、凄いな」


 その窓には、さっきの紙と同じギフトの説明が書かれていた。


 「呪われている‥‥‥か」


 本当ならば今すぐにでもギフトを試したい。

 だが、呪いによって何か起きる可能性がある以上には、簡単に試すわけには行かないのだ。

 かといって、このまま試さずに夜を迎えれば、俺は確実に魔物に食い殺されてしまうだろう。

 背に腹は代えられない。一度使ってみよう。


 あいにく俺には、剣などの付与をする武器が無かったので、地面に落ちている木の棒を拾う。

 ギフトの発動方法は何故だか、すぐに分かった。

 これもギフトの性質なんだろう。


 俺は呪いによって自分に悪影響を及ぼさない事を願いながら、ギフトを発動する。


 「【能力付与 -呪-】」


 静寂が数秒続く。

 

 「あれ? 何も起きない?」


 その時だった。


 視界にさっきの半透明の窓が現れる。


――――――――――――

木の棒 -呪- の制作に成功しました


CPが増加します


*呪われている為、制限が掛かります

――――――――――――


 「お、成功だ」


 成功したことを喜ぶ前に、まず身体に異常がないか確認する。

 呪いによる影響などは、今のところ無さそうかな。

 とりあえず一安心。


 付与前と付与後で、対象物の見た目は変わらないみたいだ。

 本当に付与できているのか、俺は疑問に思ってしまう。

 

 「大丈夫なのか?」


 少し弱気になる。

 だが、試すまでは分からない。

 俺は期待を込めて、木の棒を構える。

 剣の振り方なんて知らないが、こんな感じだろうか。


 「えい!」


 俺は木の棒を振り下ろす。


 ビュン!

 木の棒は静かに風を切り裂く。


 「え? これだけ?」


 その時であった。


 ドガガガガガガガガガガッ!

 俺が棒を振った方向に衝撃波のようなものが飛んでいき、地面がえぐれていく。


 「‥‥‥んぁ?」


 約3メートル程だろうか。草原は衝撃波によって一部、緑が観測できなくなってしまった。


 これは呪われたギフトだぞ。

 世界に忌み嫌われた人間が授かるハズレギフトじゃないのか?

 理解が追い付かない。


 「流石にこんな威力な訳ないよな‥‥‥!」


 そうだ。さっきの衝撃波は見間違いだ。

 変に期待なんかするもんじゃない。


 俺はさっき振り下ろした木の棒を、それっぽく剣士のように振り上げる。


 ドガガガガガガガガガガッ!

 

 ハハッ。これはヤバいな‥‥‥。

 俺は興奮に頭を任せて、もう一度木の棒を振り下ろす。


 ドガガガガガガガガガガッ!


 見間違いなんかじゃないみたいだ。


 俺はもう一度、木の棒を振りかぶる。


 その時だった。


――――――――――――

木の棒 -呪- の使用制限に達しました

この武器は破壊されます

―――――――――――― 


 そう書かれた半透明の窓が現れたのと同時に、俺が握っていた木の棒は手から消えた。

 これが説明にあった制限か。


 「にしてもこのギフト、ヤバすぎるだろ!」


 ただの木の棒だぞ!?

 それでこの威力‥‥‥。

 もし鉄の剣に付与したら、どうなってしまうんだ。

 まったく想像がつかない。


 興奮と衝撃で頭がくらくらする。

 大きく深呼吸をし、気持ちを整理する。


 制限があるにしても、能力付与は優秀なギフトだ。

 他人にこの能力を簡単に見せてしまうのは、おそらく危険行為だろう。

 ということは、この時点で冒険者の武器やアイテムに能力付与をしてお金を稼ぐという話はナシだな。

 ここまで優秀なギフトであれば、定職に就くよりも、冒険者として生きていく方がお金を稼げそうだ。

 

 となれば、今やるべきことは定まった。


 冒険者ギルドへ向かおう。

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