呪われたギフト【能力付与 -呪-】が実は最強だった件 ~追放されて、呪いの武器を量産していたら、いつしか呪いの王と崇められるようになっていました。勇者なんてもう相手にならないけど大丈夫?~

海原とまと

第1話 追放される

 「これから成人の儀を始める。呼ばれた者はこちらに」


 黒のローブを羽織った老人はそう言った。

 

 成人の儀――今年で15歳になる者たちが色々な思いを背負ってその場に立つ。


 なんてったって【ギフト】が手に入るのだ。


 ギフトは神が人類に唯一平等に与える特殊な能力である。


 例えば剣士であれば、剣の扱いが非常に上手くなる。

 魔法使いだと、魔法が才能関係なしに使えるようになる。


 それゆえに、良い意味でも悪い意味でもギフトはを変えてしまう。


 「緊張するな」


 俺が言うと、

 

 「当たり前だろッ! この儀式には僕のッ人生が懸かってるんだぞッ‥‥‥!」


 弟が身をガタガタと震わせながら呟く。


 俺と弟のラークは、双子ではあるが、正直仲があまり良くない。

 そのことには少し心当たりがあった。

 たった数秒の違いで生まれただけの俺が、過剰に兄のように振る舞うのが、ラークには気に障るものだったのだろう。


 「まぁ、お互い良いギフトだったらいいな」


 「フンッ‥‥‥」


 いつもと違い、冷え切ったような返事をするラークに違和感を覚えつつも、俺たちは成人の儀を迎えることになるのだった――




************




 「クルト家の長男、ルーク・クルト。こちらの祭壇へ」


 いよいよ俺の番だ。


 深呼吸をして、はやる気持ちを抑える。


 「ふぅ‥‥‥」


 準備は整った。


 「それでは、この水晶玉に手を近づけるのじゃ」


 勢いのままに手を近づけると、水晶玉は目が眩んでしまう程、激しい光を上げて輝いた。

 光が収まると老人は口を開き、ギフトを読み上げた。


 「ルーク・クルト。そなたのギフトは【能力付与のうりょくふよ】じゃ。詳しくはこれを見よ」


 ギフトについて書かれた紙を渡された。ちなみに今回以降は心の中で「ギフト!」と唱えると、紙と同じ説明が自分の視界に現れるらしい。


 老人に軽く会釈をして、俺はギフトの説明に目を通す。


――――――――――――

能力付与のうりょくふよ -蜻ェ-】


自分が対象と認識した豁ヲ蝎ィや物に能力を荳弱∴ることが出来ます?


能力付!!与をする際に魔石?を使った場合、効果が増大し!ます?!?

――――――――――――


 「文字化け‥‥‥? どういうことだ‥‥‥」


 色々考えていると、聞き馴染みのある声が近付いてくる。 


 「ルーク、そのギフトは金を稼げるのか?」


 そう尋ねてきたのは父のバートル・クルトである。


 「それは‥‥‥まだ分かりません」


 父さんはお金以外に関心を持たない薄情な人間だ。

 そんな人ではあるが、俺と弟をここまで育ててくれた。

 それにはとても感謝している。だが、それもおそらくギフト目的だ。

 だから、お金が稼げるようなギフトじゃなければ、俺たちは見限られてしまう。

 なので、一安心した。


 なぜなら俺のギフトはおそらく支援系であるからだ。


 この世界においての支援系ギフトは、とても珍しく、戦闘系ギフトの持ち主たちからのニーズが絶えず存在しており、安定してお金を稼ぐことが出来ると言われているのだ。


 俺はそれに安堵し、溜息を溢していると、


 「な、何じゃこれは! 水晶玉が急にっ!」


 老人が突然叫ぶ。


 目を向けると、儀式で使った水晶玉が突如黒く輝き出していた。


 そして、それに続くように、文字化けだらけの俺の紙が黒く輝く。


 それらは少し経つと、輝きを失った。


 「何なんだよ、これ‥‥‥」


 光を失い、地面に転がった紙を拾い上げ、改めてスキルの説明を見直す。

  

――――――――――――

能力付与のうりょくふよのろい‐】

自分が対象と認識した武器やアイテムに能力を与えることが出来ます

能力付与をする際に魔石を使った場合、よりよい能力を得ることが出来ます


このギフトは呪われている為、失敗することがあります

失敗した場合、武器やアイテムが消滅します


保有CP 0

*CPが足りないため、情報を完全に見ることが出来ません

――――――――――――


 俺が困惑を口に出すと同時に、老人は声を上げた。


 「え‥‥‥?」

 「ルーク・クルト! そなたのギフトは呪われておる!」


 老人がそう発すると、村人たちがざわつき出した。



 「呪いってどういう事‥‥‥?」

 「分かんねぇけど、危ねぇんじゃねぇか?」

 「この村も呪われちゃうんじゃないかしら‥‥‥」



 体中から汗という汗が吹き出してくる。

 呪われたギフトなんて聞いたことが無いぞ。

 焦りで思考がまとまらない。


 「呪われたギフトとは前代未聞じゃ。これは何かが起きる前兆かもしれないぞ!」


 それを聞いた人々は、続々と不安を溢していく。


 「本当に大丈夫なのかしら」

 「ここから追い出した方が良いんじゃないか?」

 「お母さん、怖いよぉ‥‥‥」


 聞きたくない言葉が連続で俺の耳を通過する。

 やめてくれ。呪いだからって勝手に悪く決めつけないでくれよ。

 父さんならこの気持ちが分かってくれるかもしれない。

 いや、期待なんてダメだ。父さんのことだ。結果は分かり切ってる。

 でも、今の俺は何故だか期待してしまう。


 無意識の内に俺は父さんの前まで来ていた。


 俺は話しかける。


 「父さん、呪いなんて関係ないよね‥‥‥?」


 「近くに来るな! 金すら稼ぐことすらの出来ない只の役立たずはもう俺の息子じゃない!」


 あぁ、この村に俺の味方はもういないんだ。


 その時だ。

 突然、大きな歓声が巻き起こる。


 疑問に思い、歓声が上がった場所を見る。


 そこにはラークが立っていた。


 「な、な、なんじゃと! ラーク・クルト、そなたのギフトは【勇者】じゃ!」


 ラークは、今この国に2人しか存在しない【勇者】の持ち主となった。

 父さんはラークのギフトが金になると分かった瞬間、俺を置いて一目散に駆けていった。


 そんな父に俺は完全に失望した。


 「ラーク、よくやってくれた! お前には小さい頃から期待していたよ。流石は俺の息子だな!」


 「や、やっぱりッ? とっ、父さんッ! ありがとう!」


 今までと違う父の態度に満更でもなさそうにしている。


 そんなラークは、俺を見て笑う。

 そして俺を指さし、口を開いた。


 「ぼ、僕のギフトが言っているッ! あそこにいる呪われたギフトを持った男は危険だッ! 今すぐこの村から追放しろッ!」



 「やっぱり危険なのか!」

 「勇者が言うなら、本当ね」

 「勇者様、流石です!」



 村人全員の視線が俺に集中する。

 彼らの罵詈雑言は鳴りやまない。


 「みんな揃って俺ばっかり‥‥‥」


 やめろと言いたいところだが、俺は歯を食いしばる。

 今更、弱音なんて吐いてられない。

 この世界ではギフトが全てなのだ。


 そしてとうとう俺は告げられた。


 「勇者ラーク・クルトが命ずるッ! お前はこの村から出ていけッ!」

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