第47話 魔王様、ざまぁのおかわりです
「ともかく、勇者ストラゼスよ。そなたの活躍ぶりはここ王都にも届いておるぞ」
「それはどうも……」
「各地で魔物を倒し、民を救う。しかも無償でときた。この国に勇者がいれば、魔物など恐れるに足らぬと評判だ。儂も鼻が高いというものよ」
正直、この王族や貴族に特有の上っ面な言い回しが苦手だ。言葉の裏の意味まで考えなきゃいけないのが、ヒジョーに面倒くさい。
要するにお前が勝手にやっていることは許せんが今回は見逃してやる、この国の番犬だってことをよく理解しておけ――そういう意味だろう。
でもそれじゃあ悔しいので、弁明をしておこうか。
「――ところで陛下、ひとつお耳に入れておきたい話があるのですが」
「ほほう? それは何じゃ?」
「実は最近、各地で魔物の動きが活発化しているのです」
これは大嘘ではない。
実際に俺が自分の目で確かめた事実である。
「それ故に、以前よりも魔物討伐に
俺はなるべく深刻そうな顔を作ってそう説明するが、王様は「ふむ」とひとこと口にして首を傾げただけ。あまり理解していないようだ。
「魔物の出没ならお主の領に限らず、以前から我が国の土地ならどこでも起きておるわ」
「……それは、そうですが」
「いったい何を弱気になっておる? おぬしは魔王を討伐した勇者ではないか。ハハハハ!」
王様のセリフに、周囲にいた騎士たちもドッと吹き出すように笑い出す。勇者が臆病風を吹き始めたと、馬鹿にしているんだろう。
俺はひとり、怒りで拳を強く握り締めた。
この国の貴族連中にとって“魔物が脅威”という認識は薄いのだろう。国民がどれほどの被害を受けているか、知らないからそんなことを気軽に言えるんだ。
なにが魔王だ。
住む場所や命を脅かされている彼らにとっては、魔王よりも魔物の方がよっぽど恐ろしい存在なんだぜ?
「して、話はそれだけか?」
「あ……いえ、本題はここからなのです」
忘れるところだった。俺は気持ちを切り替え、懐からある物を取り出す。
それを見た王様の眉が、ぴくりと動いた。
「それは?」
「私が書き記した魔物発生の報告書です。そして村や民に与えた被害も」
「これは……ふむ……」
王様は興味無さげに報告書を眺め始めた。しかしすぐに眉を寄せたかと思うと、突然血相を変えて玉座から立ち上がった。何事なのかと、周囲の騎士たちも慌てている様子だ。
「な、なんだこれは!」
「予想される、納税額の減少値です。ご理解ください陛下。民をおろそかにすれば、そのうち国も立ち行かなくなります」
「お、おぬし……まさかこれを儂に見せるためにここに?」
俺がニヤリと笑ってみせると、王様は玉座にへなへなと沈み込んだ。
報告書には、村の被害が出た原因やそれに対する対処策についてを書き記しておいた。もちろん陛下が危惧している税収の低下予想についてもだ。
「魔物の存在は、百害あって一利なしです。陛下、どうかお願いします。ここは一度、私ではなく騎士団を使った魔物の大掃討を」
そう、俺はこれを提案しようと思って王都に来たのだ。
活躍の場を与えれば騎士団の顔も立つし、魔物相手の訓練にもなる。民の生活も守れて、感謝もされる。ある程度の税金にも納得してくれるだろう。
そしてなにより――。
「魔族の勢力が弱まった今こそ、国内の増強を図るべきです。戦争相手を魔族から、魔物に変えるのです」
「くぅぅ……ストラゼスめ、これが一番の目的か……」
俺はその言葉を聞かなかったフリをして、玉座に項垂れる王様に告げた。
「では陛下、今後とも魔族への対処は私めにお任せを。他の脅威は是非とも、頼りになる騎士団の皆様にお願いいたします」
そう言って俺はうやうやしく、再び
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