第28話 魔王様、お茶会です
ある日、森の中でクマみたいにデカい四天王と出逢った。
マズい、マズいマズいマズい!!
予想外の人物が出てきて、思わず動揺しちまった。童謡だけにってか!
「ふ、まさか貴様とこんな所で再会するとはな」
「え……?」
「まぁいい。これも何かの
あ、あれ?
俺はてっきり、魔王を殺した勇者だって分かった瞬間に、殺しにかかってくると思ったんだが。たしかに四天王で最も紳士的なクリムなら、話くらいは聞いてくれるかもしれないが……。
混乱している内に、クリムはどこからともなくティーセットを取り出し、切り株の上に広げ始めた。
おかしいな、さっきまでこんな所に切り株なんて無かったはずなんだが。
「どうした、座らないのか? 茶ぐらいなら出してやる」
「あ、あぁ。失礼します……」
お茶ってこの森の中で? それも男二人で??
思わず敬語で了承してしまったが、何考えているんだこの男は?
ビクビクとしつつ俺はクリムと向かい合って座ると、彼が淹れてくれた紅茶を飲む。それは上品な香りが鼻を抜けていき、とても美味いお茶だった。
「……美味い」
「だろう? この近くにある魔族のバナーナ村の特産でな。俺が直接買い付けて、魔王城に広めているんだ」
「へ、へぇ~?」
「こっちはバンナの実を使ったパウンドケーキだそうだ。さっき焼き上がったばかりなのを買ってきた。さぁ、温かいうちに食べるといい」
え、なにこれ。
なんで貴族のお茶会みたいな会話をしているんだ俺たち。
いや、クリムは魔族の公爵って扱いだから、正確に言えば貴族なんだけどさ。
あれ待てよ? そういや今の俺は人族の貴族なんだっけ。じゃあ貴族のお茶会だわ、これ。バンナのケーキ、バナナみたいに甘くて美味しい。もぐもぐ。
「それで、なぜここへ来た?」
「いや……実は村の食糧不足が深刻でな」
あ、やべえ。思わず正直に喋ってしまった。
だがすぐに『コイツは俺を恨んでいる』という考えに至ったので、下手にウソをつかない方が正解だと思い直す。それに何もやましいことはしていないしな。
だから俺は事のあらましを全部話した。
魔王を倒した褒美として、人族の王から姫と領地をもらったこと。獣人娘たちを拾い、プルア村で生活を始めたこと。とんでもない大喰らいがいて、とても迷惑していること、などなど。
なるべくゆっくりな口調で話して、紅茶とケーキをじっくり堪能させてもらった。なんせ、久しぶりの贅沢だしな。
すると腕を組みながら俺の話を聞いていたクリムは、ふぅーと長いため息をついた。
「なるほど、事情は分かった」
クリムがそう言って、少し考え込む。
「ならば尚更、我々が争う必要は無いな」
「……どういう意味だ?」
予想外の言葉に、俺は思わずクリムを睨んでしまった。
「そんな警戒しなくていい。どうせ貴様のことだ、俺が魔王陛下の復讐をすると思っているのだろう?」
「いやまぁ、それはそうなんだが」
クリムの口調は落ち着いていて、俺に対する感情は完全に隠れている。それがまた恐ろしい。
「貴様が何を考えているかは知らんが、俺がここに来たのは本当に偶然だぞ」
「……そうなのか?」
「分かった。そちらが正直に答えたことだし、俺も嘘偽りなく話そう」
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