第5話

「合従軍総大将は、春信君にお願いしたい」


 趙国の大将軍、龐煖ほうけんからだった。

 まあ、受けるしかないか。


「承知しました。それでは、作戦を伝えます。龐煖ほうけんさんは、別動隊を率いて、函谷関の裏を狙ってください。燕国は、山岳地帯を抜けて、邯鄲を狙ってください。それ以外の、韓・魏・趙・斉は、函谷関を攻めてください」


「楚国は、どうすっと?」


「南の武関から攻めます。分散して攻めましょう」


「「「「「兵力は、集中した方が良くない?」」」」」


 兵法的には、そうだよね。

 でもね、それで函谷関は落ちなかったんだよ。

 秦国も兵力を集中させているだろうし、手薄な場所から攻め込むことにした。

 異論・反論は認めない。総大将にしたのは、君たちだからね。



「函谷関の裏の、さいには辿り着けた――と」


 これは史実通りだな。


「燕国は、山の稜線を辿っているので、時間がかかるか」


 地図のない道のりだ。伏兵に会わないように進んでいるんだな。糧道の確保もある。

 成果を待とう。


「函谷関は攻めているけど、落ちる気配がないと」


 まあ、そんな簡単に落ちないよね。


「武関はどうなってるの?」


「もうすぐ、落とせそうですが、道が狭くて大軍は送れません」


 うん、そうだよね。でもね、漢の劉邦は、数万の軍勢で攻め込めたのよね。

 この時代は、あまり重要視されていないけど、使える道なのよ。


「武関は、引き続きお願いね」


「承知しました」


 名もなき楚軍の大将軍は、受けてくれた。

 全体を見る、総大将って大変だな~。



 兵糧の関係もある。時間は、余りかけられない。





 燕軍が、秦国の国都、咸陽に到達した。そのまま襲いかかったと連絡が来た。

 武関は落とせている。だけど、進軍が遅くて、もう少し時間が欲しい。

 龐煖ほうけんは、さいを落とせないでいる。

 函谷関も落ちる気配がない。


「一応、予定通りかな……」


 咸陽に秦軍は、ほとんどいないだろう。

 龐煖ほうけんに、咸陽に向かうように連絡する。燕軍の糧道は繋がったんだ。

 龐煖の連合軍と、楚軍が到着すれば、咸陽は落とせると思う。


 ここで、函谷関を守っていた秦軍が動いた。

 函谷関を放棄して、龐煖を追いかけ出したんだ。


「そんじゃ、秦軍の背を討とう」


 連合軍を前進させる。

 函谷関を迂回して、裏から攻めると、数の少ない秦軍は、逃げ出した。難攻不落の函谷関を落とせたんだ。蕞は、撃って出て来ない。

 狼煙を上げて、龐煖に合図を送る。


「狭い道で、前後から攻められたら終わりだよね」


 数もこちらが多い。

 こうして、全軍での衝突が始まった。



 三日が過ぎた。


「秦軍は、ヘロヘロだね」


「食料が届きませんからね……」


 龐煖さんには、迂回して食料を送った。

 燕軍に地図を作って貰ったので、簡単に届いたな。

 そうすると、秦軍は、蕞に籠ってしまった。


「それは、悪手だよね。決断が遅すぎてそれしか選択肢がなかったのかな」



 武関を進む楚軍が、咸陽についた。

 秦王や呂不韋は、逃げたらしい。

 旧王都の雍かな? もしくは、蜀漢だな。


 俺が咸陽に着くと、略奪が始まっていた。


「とりあえず、勝てた……、かな?」

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