魅力的な人物を書くため、「世間一般」をちょっとのあいだだけ捨ててください
お久しぶりです。更新せずにすみません。ほかの作業がありまして、なかなかこちらを優先することができませんでした。ゆるりと続けますので、どうぞよろしくお願いします。
自分からは極力宣伝しないで書いているこの連載、読んでくださる方がいることが励みになります。
「星100ついたら宣伝するか〜」と思ってるんですが、なかなか厳しい(笑)。いや、いけんのか? それは僕の腕次第ですかね。精進します。ただ、このエッセイは、読んでいてスカッとしたり、小説を書いている人が都合のいい部分だけ切り取って適当に満足させるタイプのものではありません。できるだけ軽く書くつもりなんですけど!
「何言ってんだあんた?」みたいなことも書きます。
「わたしが書いているのはweb小説なのでここに書いてあることはあまり関係ないな」と思われたら、適当な読み物として、楽しんでください。
さて、生きているっていうのは、常識とかルールに則って社会に参加することです。でも、小説を書くとき、じつはこの「世間一般」の目を気にしてばかりいるとなかなか進みません。
もしあなたが、「殺人の是非」について真剣に考えて欲しい、と考えたとします。そのとき、「殺人はしてはいけないことである」とストレートに書いても、あまり意味はない。
なぜなら「そんなのは当たり前(一般常識)」だからです。
悲しむ人がたくさんいる。
殺しちゃいけないことになっているから殺しちゃいけない。
理由としてはその通りですが、そこに至るためにはどう書くか?
では殺す側はいったいどうして殺しているんでしょうか。二時間ドラマの犯人は金と欲、あるいはのっぴきならない事情のために殺人を犯す。
まるで危険思想を話しているみたいに思われるでしょうか。そんなつもりはありません。
当たり前のことを当たり前に描いても、ひとの心を動かすことはできない、というだけの話です。
読んだところで、「まあ、そうだよね」「うん、そりゃそうだ」で終わりです。
軽い推理小説だったら「あー、犯人捕まってよかった」とすっきりして本を閉じるでしょう。僕はわりと小説を読んできたと思うのですが、いまだに覚えているものと、そうでないもの、タイトルすら忘れたものがあります。
なぜそんなことが起きるのか。
好き嫌いの問題ではありません。嫌いなものでも印象深いものは多い。
・魅力的なキャラクター
・思いがけないストーリー
・全体を貫くムード
が印象的なものは、記憶に残る。せめて上の三つのうち二つあれば、残る確率は格段にあがります。
「ときと場合によっては、殺人は必要な行為である」という筋で小説を書こうとしたらどうなるでしょう?
読者は「冗談じゃない! 許される殺人があってたまるか!」と怒りを覚えたり、「殺人はもちろんだめだけど、自分もそう感じてしまうことはたしかにあるな」と自身の過去の経験を思い返したり、自分の価値観と照らし合わせたりする。
つまり、「殺人の是非」について「本気で、真剣に考える」ようになる。もし殺人の理屈がなかなか筋の通ったものであったら、観客は揺らぎます。
うまく書けば、「刺さる作品」となります。
殺人者の内面・過去、なぜ殺人を起こしてしまったのかをしっかりと描かれた推理小説というのがあります。
『模倣犯』『容疑者xの献身』『白夜行』『悪人』などが参考になるのではないでしょうか。いずれも映像化された傑作ですね。
そして罪を犯した人間のことも、共感する。
小説を読むのが苦手なら、『デスノート』でも『カイジ』でも構いません。なんであれを読んで、僕たちはドキドキするのか? ストーリーもさることながら、人物の魅力が迫ってくる(もちろん見せ方のうまさ、もあります)。
殺人がいけないこと、というのは当たり前の話です。僕も絶対したくない。襲われたりでもしたら、反撃するかもしれないけど。
人類を滅ぼそうとするやつ、例えば『アベンジャーズ』のサノスなんて最低最悪。指パッチンで人類を半分にしやがる。さすがにサノスレベルだと、共感する気にもなれないか。
もちろん、過去ばかりやたらしつこく書くのはおすすめしません。小説は未来に向かって書かれていくものですから。
あなた(作者)は「世間一般」ではなく、あなたという個人です。当たり前ですね。
魅力的で共感できる人物とはなんなんでしょう。
正しさ、かっこよさ、強さ、いろいろ思いつきますが、大雑把にいって、
「無視できないひと」「気になって仕方のないひと」のことです。
そのひとのことをもっと知りたい! その人の身に降りかかる出来事をみたい! その人が問題をどう克服するかを最後までみとどけたい! と観客に思わせることの出来る人物です。
殺人を犯してしまったとしても、魅力的な人物を、あなたは書くこと、自分で想像することができますか?
先月、ラピュタ阿佐ヶ谷で松方弘樹の脱獄シリーズの一作目『脱獄広島殺人囚』を観ました。捕まってあたりまえ、ムショにぶちこまれて当たり前の男が主人公なんですが、観ているうちに、どんどん彼のことが好きになってしまうのです。
彼は絶対に諦めない。汚物まみれになりながら脱走を企て、共謀はするわ、罪を侵し続けるわ。外にでたところで静かに生きることなんてできやしない。けれど、とにかくこの自分の置かれた状況から飛び出すことだけを考えている。
ラスト、盗んだ大根をかじりながら線路を歩く松方弘樹の謎のかっこよさ!
彼は、「絶対に関わりたくない」悪党です。
しかし彼のバイタリティ、生きようとする意志、自分を通そうとする根性が観るものを惹きつけ、共感すら芽生える。
ある人はこの映画を観ると「生きる希望が湧いてくる」と言ったそうです。このシリーズは当時三作製作され、大人気シリーズになったそうです。
もちろん、主人公を魅力的にするためには、周りの人物やライバルも魅力がなくてはいけません。しかし、一人核となる人物ができさえすれば、簡単に生まれるでしょう。
なんなら、主人公よりも魅力的な人物ができて、そちらのほうが人気になるかもしれません。
人気漫画でよくある事態ですね。脇の方がキャラが立ったり、当初いた女性キャラがまったくでなくなったり(そりゃ鬼気迫る勢いでテニスやってりゃな〜!)。
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