ヤンデレが孫氏の兵法で俺を攻略するみたいです
ワナワナ
短編
「あーあ、全然振り向いてくれないな。」
彼女は高校生で、まごうことなきヤンデレであった。それは下校時間のことだった。彼女はいつものように歩いて帰っていると、割引セールを掲げた本屋さんが目についた。
彼女は気まぐれに店に立ち寄り、運命の本に出会う。
「もしかしたらこの本があれば、この孫氏の兵法があれば、彼と付き合えるかも!」
「孫氏は言いました。彼を知り己を知れば百戦殆うからず。」
「つまり私が彼の部屋にカメラを仕掛けることは勝利のため。」
彼女は自分のパソコンで彼の部屋を監視していた。彼女には犯罪をしているという自覚はあったが勝利のための犠牲と割り切っている。
「ふぁぁぁ。まだ寝ないのかな?やばいこのままだと私が先に寝ちゃう……。」
「や、やばいコーヒーを買ってこないと……。」
「あれでもパソコンの前から離れたらだめ?」
「まさか彼は全てを知った上で私の愛を試してる!?起きないと!」
彼女は夜更かしが苦手だった。そしてやがて彼女は机の上で眠ってしまう。
彼女は大きなあくびをしていた。それにつられて彼もあくびする。席が隣だからだろうか伝播する。
「孫氏は言いました。戦わずして勝つのが最善であると。」
彼女は小声でつぶやく。彼女は告らせることに戦略を変更した。隣の席という地の利を活かして彼女は自分をアピールすることにした。
「教科書忘れちゃって……見せてくれない?」
「あぁ、はい。」
彼は無言で自分の教科書を差し出す。そして彼は机の下でスマホを始めた。このとき彼女は机をくっつけるつもりだったのにそれが破綻したことでひどく混乱していた。
「ありがとう……。」
(どうして、どうして?彼はあまりスマホゲームを家ではしていなかったのに。)
彼女は興味本位で彼のスマホを覗き込む。そして彼女は敵の存在に気づく。彼がしていたゲームは美少女が出てくるいわゆるソシャゲであった。
「だ、駄目だよスマホしたら。」
「今イベント中でドロップ率が……以下略。」
(あんな二次元の子に負けるわけにいかない。)
彼女は戦略を変える。
「孫氏は言いました。戦いとは正攻法を用いて敵と対峙し、奇策を巡らせて勝つのであると。」
「私が一ヶ月かけて書いたラブレターを彼の下駄箱に入れたから完璧!」
彼女は屋上で彼を待っていた。呼び出す時間までも計算に入れて夕日がちょうど落ちる頃だった。彼女はヤンデレらしくロマンチストなのだ。
「やばい私の心臓がドキドキしてる……。」
「落ち着け私。彼が扉を開けたら振り向いて告白する。簡単。簡単。」
「大丈夫、私ならできる。」
彼女は深呼吸をする。
しかし彼は待てども待てども来ない。当然だ。彼は学校という場所にできる限り長くいたくないのだ。学年一の帰宅部である。
「あ、あれ?来ない……。嘘……。」
「もしかして彼に何かあったんじゃ……。」
ピコン!とスマホの通知音がする。
『ライソで要件を聞きます。なんですか?』
「そんな……。ど、どうしよう何て返信しよう!?」
「やっぱり正直なほうが良いよね……。」
『好きです。付き合って下さい。』
彼は返信しなかった。ヤンデレ相手にこのような行為は危険である。
彼女は登校していた。
「孫氏は言いました。振り向いてくれないなら監禁すればいいと。」
ちなみに孫氏はそんなことを言っていない。彼女が都合のいいように修正している。
「今日は学校に行く。それで帰りにこのクロロホルムで眠らせて……。」
クロロホルムではすぐに眠らないことを彼女はまだ知らない。
「あの……信号赤ですよ。」
声をかけたのは例の彼。彼の目にはくまが出来ていた。彼女は思考がクリアになり歩くことをやめる。
「ど、どうしてここに!?」
「そっか家の方向は同じだったね。」
彼女は一人で納得していた。
「あの……僕なりに考えたんですけど。こういう事は面と向かって言いたくて……。」
「僕も好きです。付き合って下さい。」
彼がソシャゲをしていたのも屋上に行かなかったのも恥ずかしかったからだった。二人は抱き合いそして幸せなエンディングへ……。
「ところでこのカメラ見覚えがありますか?」
「ワタシシラナイヨ。」
幸せなエンディングである。
ヤンデレが孫氏の兵法で俺を攻略するみたいです ワナワナ @wanawana255
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