藍色の花嫁

雪村絢瀬

姉ちゃんに花束を


俺と姉は、血の繋がりがない。

再婚の連れ子同士、だから、顔も似ている訳がない。




けれど、好きなものが似ていた。

お互いの価値観が似ていた。

それだけで、凄く、意気投合できた。





もう言ってしまおうか。

俺は少なからず、姉として、以外の感情を抱いてた。




「ねえどうして手を繋ぐの。私たち、もう高校生だよ。」

鈍感な貴女は、いつも俺の隣に居てくれた。

「,,,,,,,姉ちゃん、すぐどっかに行くから」


「ふふ、そっか,,,,,、優しいんだね」


優しいからじゃない。貴女だからだ。






,,,,,,,,,一度だけ


一度だけ、彼女にこの気持ちを伝えたことがあった


「好きだよ,,,,姉ちゃん」

「,,,,ん?私も好きよ?」

「っ,,,違うっ!」

俺が言いたいのは、そう言うことじゃなくて,,,,,



その言葉はシャボン玉のように、

心の中で浮かび上がり、静かに朽ちた



「だい、じょうぶなの?」




「ううん,,,,それでいい,,,,,,,,,冗談」




変わるのが怖かった、終わってしまうのが嫌だった



これが最初で最後の、告白となった。









それから時計は、5年の月日を刻んだ。



今、俺の目の前にいるのは、普段の姿ではない貴女だった。

澄んだ瞳、ピンク色の唇、丁寧に巻かれた髪。

いつまでも見つめていたいと思う度、同時に目を逸らしたくなった。

俺じゃない誰かのために、あまりにも綺麗になった貴女から。



「姉ちゃん,,,」




それでも、もう一度、好きだと伝えられる勇気があったなら、

今度は、冗談なんて笑って誤魔化さなかったのに。


ウエディングドレスに袖を通した貴女に

今更、そんなことを言って、困らせたくなかった。


「ん。なーに。」



本当は、その笑顔を独り占めしたかっただけなんだ。


結婚おめでとう。

姉ちゃん、お幸せにね。


そんな言葉は、飾りになってしまうから言いたくない。




俺が望んだとおりに、変わることのない関係は、続いていくのだろう。

俺の望みとは、異なる形で、



貴女の隣には、俺が居たかった。

貴女を幸せにするのは、俺が良かった。




だけど、俺は、ただの意気地なしだから。


だからせめて、もう嘘はつくのは辞めた。



「,,,,,,,すっげぇ綺麗だよ。姉ちゃん」


それが、俺の精一杯だった。



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藍色の花嫁 雪村絢瀬 @yuki_mochi

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