第7話魔道具店①
「うわーーー魔道具ってこんなにたくさんあるんだな......」
「はい、驚きですね......」
ボクと姉さんはキラキラとした目で店内を見回す。
どこの魔道具屋に行くか一瞬迷ったが、無難に皇都で1番大きな場所に来た。大は小を兼ねると思う。多分......。
周りにいる客が田舎っぽいボクたちの反応を馬鹿にしたような目で見てくる。
まあ、事実ルーズ家の領地は田舎だった。
皇都から近いにも関わらず、周りは森だらけ。中には魔物が巣食う森もある。
当時騎士長だった先先代が大型のスタンピードから皇都を守った偉業で皇帝から男爵の地位を賜り、そこら辺一帯を領土として頂いた。
そしてルーズ家は皇帝から直々に魔物から皇都を守るように命じられた。
先先代が騎士だったから
でも逆に空飛ぶ魔物が来たらどうするん?
指くわえて見てることしかできないじゃんって思ってた。
まあ、今となってはどうでもいい話しだ。
田舎っぽいと馬鹿にされても別に気にならん。
それよりも魔道具だ。
「姉さん、姉さん! これでお湯を沸かせるらしいぞ!」
「まあー、火を使わずにできるのですか?」
前世でいうポットみたいなやつがあった。てか形が完全にポットだ。何となくボクと同じ世界から来た人が作った物の気がする。
「便利そうなのに、ルーズ家にはこういう魔道具が少しもなかったな」
「それほど
「便利そうなのに馬鹿だな」
「本当ですよ!」
ボクと姉さんは
「自分が使わなくても、使用人のために買ってやればいいのに」
「そうですよ。これなんかあれば使用人は泣いて喜びます」
そう言って姉さんが蛇口見たいな物を指さす。
「それはどういう効果があるんだ?」
「なんとこれ、蛇口を捻れば暖かいお水が流れてくるんです! 冬場の洗濯が助かります」
......ああ、なんか姉さんには悪いことしたな。ボクの洗濯は今まで姉さんがしてたからな。
寒い冬。
手を悴めながらも服を洗う姉さん。
「姉さん、悪かったな」
「!......いいえ、このくらい何ともありませんでしたよ」
姉さんは一瞬驚いた様子だったが、すぐにスベスベな手を見せつけながらニッコリと微笑んできた。
うん。ボクも洗濯できるようになろう。そもそも今は平民だし。家事は分担するもんだろ?
そっち方が家族って感じがする。いいな。
ボクは姉さんの笑顔を見ながら密かに決意を胸にした。
その後もいろいろな魔道具を見て回り、その間姉さんとボクはずっと興奮していた。
でも......使えんの(えないのです)か......
2人してがっくりと肩を落とす。
やっぱり残念な気持ちが残ってしまう。
そんなときに
「困りますなぁーお客様。さっきから買わずに見てるだけで。お金がないならば即刻立ち去って頂きたいですねー」
横に肥えた中年の男が髭を弄りながらボクらに話しかけてきた。
んだこいつ、殺されたいのか?
ボクには沸々と怒りが湧き上がってくる。それは姉さんも同じだったみたい。
ボクと姉さんはお互いに目配せし、姉さんは鞄から金貨がたんまりと入った麻袋を取り出す。
宿屋の女に拾わせたやつだ。あの女なかなか優秀だった。ボクと姉さんが朝メシを食べている内に全部拾って集めて食堂に持って来たのだ。
クククッ、いい働きをした。
姉さんはわざとチャリンチャリンと音を鳴らせる。
「せっかくお高いお買い物をしようと、お忍びで来ましたのに。残念ですわね。テオ様」
ナイス名演技! 流石姉さん。わかってる。
「ああ、とても残念だ。ああ、麻袋の白金貨よ、申し訳ない。お前らに仕事を与えられなかった」
ボクは心底残念といった様子で肩を落とす。
すると
「お、お客様。大変申し訳ございませんでした!!!」
中年男が手のひら返してペコペコするではないか。
クククッ、1人で踊ってろ。
ボクと姉さんはこの魔道具店を勢いよく出て行く。
背中で中年の男が悔しそうに歯を食いしばって、ボクらを睨んでいるが自業自得だ。
お前は後でもっと後悔するんだよ。
ブタヤロウが。
ボクは邪悪な笑みを浮かべながら歩く。
隣にいる姉さんはやれやれといった様子で額に手を置いた。
「テオ様、今回は金貨だけではなく白金貨も持って帰って来てくださいね」
(......誰かこの2人に道徳を教えて欲しい)
か、神様!?
姉さんはボクに念押しをするのだった。
後日、皇都中に一大ニュースが走った。
皇都一の魔道具屋が
強盗にあって潰れたらしい。
噂では
金貨と白金貨だけが綺麗さっぱり盗まれてたとさ。
―――――――――――――――――――――*あとがき
新作始めました。
「皇国の元皇太子、可愛い婚約者とスローな帰還をする。もちろん皇国には戻るよ、スローライフしながらな!」
という題名です。
本作はほのぼのしつつ無双する夫婦の話しです。
ぜひ足を運んでみて下さい。
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