第6話魔力回路
「意外と
「そうですね。とても
ボクと姉さんは宿の食堂で朝メシを摂っている。今までは姉さんが作ったものを食べていたが、泊まった部屋には当然調理場がなかった。
だから外で食べることになった。
そこで宿屋の女にメシが
「それならば、ぜ、ひ、と、も、我が宿の食堂でお召し上がりください!!!」
すごくおすすめされたから来てみた。
まあ、すごくお腹空いてて早く食べたかったしちょうどよかった。
「テオ様、今日のご予定はどうされますか?」
姉さんは上品な仕草でスープを掬い、口に運ぶ。
うん。ボクよりもとてもとても上品。生まれがいいのは一目瞭然だな。
「姉さん、ボクは本格的に魔法を習おうと思う。だから昼間はとりあえず魔道具店にでも行ってみる。何があるかよくわからんけど」
「! テオ様は遂に魔法を習われるんですね! 今まではあの人たちがテオ様の邪魔を......」
姉さんは嬉しそうにした後、ぐぬぬぬっといった様子で歯を食い縛る。姉さんはメイド服を捨てた。だからもうあの家に仕えていない。いくらでも悪口言ったれ。......ボクも言っとく。
ルーズ家なんてさっさと潰れちまえ
ボクがあの家に言いたいことはこの一言に尽きる。
「......ふーーー、それはそうと、どうして魔道具店なんです? 師に学ぼうとは思わないんですか? 人から教わるほうが早いと思うんですけど......」
何とか脳内で悪口を言うだけに
「ああ、姉さんはあのときまだルーズ家で働いてなかったか。ボクは7歳のときにこっそり屋敷を飛び出して魔法適性を測りに行ったんだ。結果は無適性。だから師に習うのは無理だ」
「!......そう...だったん...です...か......」
姉さんは綺麗な青い瞳を大きく見開いた後、俯いて悲しそうにし、声も
「......でしたらどうして魔法を習われようとするのですか? 私と同じように無適性だと属性魔法が使えませんのに......」
姉さんは苦しそうに悔しそうに言う。
まあ、姉さんは昔それでひどい目にあったもんな。
姉さんの過去をすべて知ってるボクには、姉さんがそういう反応を見せるのも頷ける。
クククッ、だがな姉さんよ。安心しろ。そんな顔する必要なんてない。ボクは必ず属性魔法を使えるようになる。それどころか姉さんにだってきっと......。
「普通なら、使えんだろな」
「普通なら......ではテオ様は違うんですか!?」
姉さんは急にパァーッと明るくなり前のめりになって尋ねてくる。
「ボクが適性検査で無適性だったのは、恐らくボクの魔力回路が普通と違ったからだ。そして多分無適性の人はみんなそうだと思う」
「魔力回路が普通と違う、ですか?」
姉さんは頭の上でクエスチョンマークを浮かべている。
「ああ、まだ確信には至ってないが、そのせいで今の魔法体系と魔導具が使えないんだろな」
適性検査機も魔導具だし。
「では私たちの魔力回路は何のために存在してるんですか?」
姉さんはおずおずと尋ねる。
それはボクも疑問に思っていることだ。
でも昨日のおっさんの話しが何か引っかかる。失われた魔法、古代魔法。
普通綺麗サッパリなくなるなんてことがあるのか?
結界内で使えんだけで普通に便利だろ、転移魔法。いや他の古代魔法は知らんけども。
ひょっとすると誰かが意図的に古代魔法を――「テオ様!」
ボクが熟考していたら姉さんが心配そう――いや不満そうに尋ねてくる。
私の話しを聞いているのですか?
そんな感じだ。
「悪い、少し考え込んでた」
「全くもう。テオ様はいつも話しの途中で考えに
プクッと口を膨らませて不満を隠そうとしない。クククッ、リスみたいだな。
でも......もしかしたら、ボクらの魔力回路には無限の――
「可能性が......」
ある。
「可能性?」
おっと、口に出てたみたいだな。
まあいい、これ以上あれこれ考えてもわかることはないな。
とりあえず予定通り適当に魔導具買って、魔力回路の違いを調べるところから始めるか。
そうと決まればいち早く行動を起こしたい。ボクは誰よりも欲が強い。欲求を抑えることなんてできるはずがない。
「姉さん! さっさと食って魔導具店に行くぞ!」
ボクは音速で朝メシを口に入れ始める。
「ちょ、ちょっとテオ様! もっと綺麗に食べてください。私のように上品に!」
......うるさい。
ボクは姉さんにガミガミ言われながらも過去最高速度で朝メシを平らげた。
食事中にいろいろ喋るほうがマナー違反では?
密かに思ったが言うのはやめておいた。
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*次話 明日18:42予約投稿済み
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