第5話 カニ同盟2
人を知るのは怖い。
歯を抜いた後の空洞に舌を突っ込む時の味がする。臭いもなんだか血生臭くてなにより痛い。
そうして唾を洗面台に吐くと、血が混ざっている。蛇口を捻ると水が出て、私の唾は細長く渦になって流れる。
嬉しいことは全て無くなって今の私など幻想に過ぎなく、結局は皆過去に生きている。
過去に思いを馳せることに人生の大半を費やしてきた。
昼間、日差しに顔を晒していると日射病になり、私を騙した出来事を思い出す。
人を知ると過去はその瞬間死に、また新たな姿で私の目の前に現れるだろう。
例えば蟹の姿 。蟹が世界の均衡を保っていることは周知の事実だが、個人に過去や現在の幻覚作用を引き起こすことはまだ私しか知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます