第2話 乙女の心臓は海に
乙女の心臓は海に沈んだ。真っ白な絹に包んで、夜空のような青の瓶に入れて、私が沈めた。
これで乙女はもう恋をできない。
私はもはや帰ることは諦めた。街行きの市電は朝まで出ない。金属の椅子に寝そべりながら、闇に沈む海を眺めた。
今日は帰らない。明日も帰らないと思う。帰れないのだから。
この夜唯一の光を湛えながら、市電がホームに止まった。一両編成のその電車は、儚く美しかった。私は無意識に電車に飛び乗っていた。
乙女が座って文庫本を読んでいた。
悲しいような、怒ったような表情をしていた。私のせいだ。
そんな私達を乗せ、電車は走り出した。
そこで私ははたと気づいた。
これは夢だと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます