第12話 オッチャン頑張る

 あんまり頭を使いながら食べても料理が不味くなるだけだ。

 おれはカードのことは忘れてメアリーアンの作った料理に舌鼓を打つ。


 メアリーアンはカードの内容を考えながら料理に手を伸ばす。

(お行儀が悪いですよ。メアリーアンちゃん)……と親御さんが見たら叱るのだろうが、俺からすればごく普通のことだ。


「タケオさん、今の所カードの中身は解読不能です。わかるまではこの件は保留にさせてもらいますね。後で色々調べてみます」


「わかったで、頭脳労働はメアリーアンちゃんの役割りだからね、任すよ」


「銅貨はもういらない感じかね?」

 銀のカードはまだ揃っていない。銀貨はもっと必要だ。


「そうですね、ノーマルカードはもういらないと思いますので銅貨は銅貨として大事にしましょう」


「おっしゃ! そしたらもう時間は無いが銀のカードを揃えるために頑張るでえ」


「美味しく頂きました。ご馳走さん」

 俺は食事を切り上げてまたお宝探しを再開した。とにかくこの辺一帯はたくさん硬貨が埋まっていそうだった。プリンちゃんが待ってましたというように俺の周りを駆け巡った。


「頼むで、プリンちゃん」

 俺はプリンちゃんに声をかけた。プリンちゃんが鼻でクンクンお宝を探し始めた。

(プリンちゃんオッチャンの言うこと分かるのかな?)


 ここいらには本当にお宝がたくさん埋まっているらしい。プリンちゃんはすぐに穴を掘り出し、俺の方を見て「ワン」と吠える。


「はいはい。そこか。掘りますよ〜」

 俺はプリンちゃんを退けてその場所を掘り始めた。そしてすぐに銅貨を掘り当てた。

 プリンちゃんって本当に凄いな〜、必ずなんか埋まっている。今日に限って言えば百%貨幣の埋まっている所を教えてくれていた。(ガチャ以外)


「ほら、プリンちゃん。これが出てきたでえ〜」

 俺が掘り当てた銅貨をプリンちゃんに見せると、プリンちゃんは銅貨をペロペア舐めてから嬉しそうに俺の顔を見つめて「ワン!」と一声吠えた。

 尻尾はぶんぶん振っている。可愛いねえ〜。


「ほな、次探しとくれ」と俺はプリンちゃんに頼んだ。


「ワン!」と一声。

 プリンちゃんはくるりと向き直ると尻尾を振りながら小走りで三mくらい移動してそこでクンクンと探し出した。辺りはもう暗くなり始めている。


 プリンちゃんが掘り始めたので俺が引き継いで掘り始める。ほどなく俺は銀の硬貨を掘り出した。


「そろそろ俺の食事の時間のようだな」


 インテリジェントソードの声が聞こえた。

 俺は驚いてあたりを見回した。そしてわずかに残った赤い夕陽の中にゴブリンの影を見つける。四匹のゴブリンがこっちに向かってきている。


「ヤッベ〜! アンちゃん、ゴブリンだ!」


 俺はインテリジェントソードを引き抜いてかまえた。

 プリンちゃんはいち早くメアリーアンの元に走ってもうその胸に抱かれている。


 ちょっと遅くまで宝探しをやり過ぎてしまったようだ。この辺は夜はゴブリンが出るのかもしれない。


 インテリジェントソードの食欲が握った手のひらから伝わってくるが、オッチャン戦うの怖いんですけど……。できれば逃げたいが逃げきることも不可能だと思った。


「こうなったらやるしかねー!」

(オッチャンは覚悟を決めたで!)

 俺は向き直ってゴブリンを睨みつけた。


「おりゃ! おりゃ! 切るぞ! 切っちゃうぞ!」

 インテリジェントソードを刺すように動かして威嚇する。へっぴり越しなのは致し方ない。


「ギギー! グギャギギー!」

(ゴブリンもなんか威嚇して来ます……。怖かっね〜ぞ、このやろ〜)


 四匹のゴブリンが太めの木の棒を持ってオッチャンを囲んだ。オッチャン絶対絶命です。


「おら〜!よるんじゃね〜!」インテリジェントソードをブンブン振り回してゴブリンを威嚇し、近づく奴を追い払う。


「アンちゃん、俺に構わず逃げるんだ!」俺は戸惑っていたメアリーアンに向かって叫んだ。


「で、でも〜」


「早く逃げろ!そんでもって、助けを呼んできてくれ!」


メアリーアンが頷くと踵を返して走り出した。


「ギギギ!」

 ゴブリンがメアリーアンを追いかけようと向きを変える。


 追いかけようとするゴブリンの前にオッチャンは立ちはだかった。

 別にメアリーアンが助けを連れてこられるとは思っていない。

 メアリーアンが急いで逃げ出せる言い訳を作ってやっただけなのだ。

 メアリーアンが助けを連れてくるまで……そんな長く決着がつかないわけがないんだ。


「オリャ、オリャ〜!」


 オッチャン剣術は素人です。何度か剣を突き出して突くぞ! 突くぞ! と威嚇する。掛け声だけは威勢が良い。


「ギャ、ギャ、ギャギャギャ!」


 ゴブリンがオッチャンを取り囲みだそうとしてるみたい。今のはそういう合図だったのか? オッチャンゴブリン語はわからないんですけど。


 俺は囲まれないように剣を振り回しながら移動した。とにかく囲まれたらやられる。一匹づつなら強くはないはずのゴブリンだが死角から攻められては敵わない。

 リーチはこっちが長いんだから、一対一ならこっちが有利。囲まれないように、剣を振り回して端のゴブリンを攻撃し、囲みを突破して有利な位置どりを取るように気をつける。

(囲まれるな! 囲まれちゃあ、やばい!)

 倒すことなど考えずとにかく囲まれないように突破を繰り返す。

(死にたくないよー!)














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