第7話 インテリジェントソード

「タケオさん! 怪我はないですか?」


 メアリーアンが心配そうに駆け寄る。


「あ、大丈夫やで!」

 照れ笑いをする俺。(タケさんと呼んでくれた方が嬉しいんですけど)



「なんとかやっつけられたみたい。二匹は逃げていったから、たぶんもう大丈夫」


 俺が無事なことを確かめるとメアリーアンの興味は剣へと移った。

「この剣、喋ってません?」


 メアリーアンにも剣が喋っているのは聞こえていたらしい。

 もしかしたら俺の幻聴かもという考えは打ち消された。


「アンちゃんにも聞こえたんかい?」

 俺は名前を省略して呼んでみる。


「聞こえてましたよ! これってやっぱり凄いお宝ですよね」


「ワン!」

 プリンちゃんが尻尾を振り回して喜んでいる。


「普通の剣じゃあないようやな?」

 俺にはこの剣が何なのかは皆目見当がつかない。


(オッチャン学が無いのでその手のことはちーとも知らんのよ)


 ただ普通の剣でないことはそんな俺にも分かった。


「あー不味かった。おい、お前! 今度はもっと美味いもん食わせろ!」

 また声が聞こえる。


 タケオとメアリーアンは剣を見てから互いを見つめ合った。


「これってやっぱりあれですよ!」

 メアリーアンが興奮気味に声をあげる。


(なんでしょう? あれと言われても?)


「インテリジェントソード!」


 残念ながらオッチャンの辞書にはインテリジェントソードの文字は無い。


「インテリジェントソードですよ! 幻のインテリジェントソードです!」

 メアリーアンは大興奮で目をキラキラと輝かせている。


「ままま、幻の……」

(幻ってことは相当レアな逸品ですか? 知らんけど)


 俺はよく分からんが、ここは喜ぶところだろうとあたりをつけてニッコリ笑って見せた。


「やりましたね! タケオさん、最初に掘り出したお宝がインテリジェントソードだなんて、やっぱりプリンちゃんが推したタケオさんですね!」


 ところでオッチャンは、インテリジェントソードって何なのかを知りたいけど……プライドが邪魔してここは聞けない、当然知ってるという顔でいないと……恥ずかしいから。


 オッチャン、チョット見栄を張る。


「この剣どうする?」


「こんなレアアイテム売ってしまったら二度と手に入りません。大事にしまっておきますよ」

 当然だという顔でメアリーアンが答えた。


「そうだよね、じゃあこれ!」

 俺はメアリーアンにインテリジェントソードを渡そうとする。


 メアリーアンはインテリジェントソードを受け取るとマジックバッグにしまおうとした。


「チョット待て!」

 剣がまた声を張り上げる。


 メアリーアンは剣を収納するのを一時停止した。


「なんですかあ〜」

 俺が剣に話しかけてみると剣が答える。

 こいつ会話ができるらしい。


「やっと石から出られたのに、今度はバッグに閉じ込めるなんて、そんな酷いのはないだろう! 少しは娑婆の空気を吸わせてくれよ!」


(気持ちはわかります。ごもっともなご意見ですね。でもこの剣を持ち歩くのはいかがなものか?)

 オッチャンは愚行する。


「そうね! でも〜どうしましょう」

 メアリーアンが首を捻った。


「そこの男が腰に装備すれば良いだろう」

 剣はそんなことを言うが穴掘りの職場に剣をさしてはいけない。穴を掘るのにも邪魔になる。いや、それ以前に周りから白い目で見られるのは間違いない。


「それはダメだな、仕事の邪魔になるから」

 俺は真面目な顔でお断りした。


「アンちゃんが装備すると言うのは?」


「え〜、私はそんな格好したくないですよ。タケオさんが装備してくださいよ!」


「無理無理、職場に剣は持ち込めません!」


 俺がハッキリと断るとメアリーアンが剣を説得しようとする。

「そういう訳だからごめんなさいね! できるだけ出してあげるから普段はバッグに入っていて! お願い!」


「仕方ないな、できるだけ出してくれよ! それとときどき魔石を食わせてくれよ。俺は魔石を食ったぶん強くなれるんだからな」


(なんやて! 魔石を食ったぶん強くなるやて? もしかしてチートアイテムか?)


「あの、強くなるって具体的にどういう事でしょう?」

 オッチャン丁寧に剣にお伺いを立てた。


「よく切れるようになったり、持つだけで剣の腕が上がったり……とかかな」


(なんかチートアイテムっぽいこと言ってますやんか? 流石はインテリジェントソード……)


(でも、持つだけで人を斬りたくなるとかないですすよね?)


「わかった! 機会があるたびに魔石を食わせてやる事を約束しよう。

だから普段はバッグに入っていておくれ。良いかい?」

(此処は毅然たる態度をとるべきや)


「わかったぜ。魔石をちゃんと食わせてくれよ!」

 インテリジェントソードが渋々納得して俺は剣をバッグに収納した。


「良かったですわ! 一時はどうしようかと思いましたもの」


「まあ、話がついて良かったよ。じゃあ今度の宝探しは来週で良いかな?」


「明日は歩いて宝を探しますよ!」

 ニッコリ笑って首を傾げるメアリーアン。


(この笑顔には敵わないです。はい)

「わかった、また明日な」


「その前に、掘った穴はちゃんと埋めといてくださいね!」


 ああ、それな! 力仕事はオッチャン担当。

 掘った穴は埋めなければなりません。


 俺は掘った穴を埋め出した。

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