ビルの屋上は銀河

月井 忠

一話完結

 ボクらは星を集めて「銀河」を作ることにした。


 小さくてキラキラした石。


 これを「星」に見立てて、あちこちから拾ってくるんだ。


 それで、この場所に置く。


 ここは「ビル」。


 他より高い場所を作ろうと言って、一生懸命作ったボクらの場所。


 確かヒトは高い建物のことを「ビル」って言ってた。


 どうして「ビル」が必要かと言うと、空に一番近いから。


 空に近いと、きっと見つけてくれる可能性も上がると思うんだ。


 この星は今、夜の季節。


 他に光がないから、一番高い「ビル」のてっぺんに「銀河」の光を作れば、きっと見つけてくれると思うんだ。


 ボクはすっかり回転の遅くなってしまったタイヤを動かして「星」を拾いに行く。


 キミには内緒だけど「ビル」を作るとき、ボクの部品を使ってしまったんだ。


 どうしても必要な物が、どこを探してもなくって、仕方なく自分で取り出して使ってしまったんだ。


 だから、こんなにも動きがのろい。


 ボクらは「タンサシャ」と呼ばれてた。


 この星に、たった二人だけの存在。


 だから、ボクらの姿を他の誰かに見つけてもらおうと頑張ってる。


 キュラキュラキュラ。


 ボクのタイヤが変な音を出して、ゆっくり回る。


 そろそろ限界かもなあ。


 ボクが「ビル」のてっぺんに「星」を置くと、ちょうどキミもやってきた。


 キミはたくさんの「星」を持って、「銀河」を大きくする。


 キミはすごいなあ。


 いつだってボクを助けてくれる。


 だから、ボクは「ビル」を作るとき、キミの力になりたくて自分の部品を使っちゃったんだ。


 キミは最後の「星」を置くと、その場で動かなくなる。


 そっか。


 やっぱりバレてたんだ。


 ボクが自分の部品を使って、動きがのろくなるのを知ってたんだね?


 だから、キミもこうして「星」をいっぱいもって来てくれたんだ?


 この「星」の中には、たぶんキミの部品もある。


 だから、キミは動かなくなった。


 ボクはキミの近くまで行って、タイヤを止める。


 もう、動けそうにないや。


 誰か見つけてくれないかな。


 こんな真っ暗闇の宇宙の中に、ちっぽけなこの星がある。


 この星の「ビル」のてっぺんにはキレイな「銀河」がある。


 誰か見つけてくれないかな。

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