第33話 アルのお土産 7

 アルが、ジュリアンさんを案内しながら廊下を歩いていく。


「アルが馴染みすぎてて笑えるんだけど……。ここは、アルの実家か? どう見ても王宮より馴染んでるだろ……」

 

 またもや笑いのつぼにはまったジュリアンさん。

 笑いながらアルの隣を歩いている。


 私は二人の後ろをついていく。

 そう、今のうちに、ジュリアンさんの邪気を少しでも吸い取りたいから。


 背後から観察してみると、ジュリアンさんの邪気が目立っているところは右手。

 黒い煙が肩のあたりからツタのように絡まっている。しかも、手首から先は真っ黒なのよね……。

 まさに、邪気のがんじがらめって感じ。

 うーん、これは、簡単には吸い取れなさそう……。


 アルの大事なお友達だし、完全に邪気をとって、すっきりとした状態で王都に戻ってもらいたい。

 でも、ジュリアンさんに気づかれずに、この強固な邪気をとれるのかな? 


 他には、比較的薄い感じの黒い煙が、背中にふわふわとまとわりついている。

 このあたりは、簡単に吸い取れそう。

  

 とりあえず、ジュリアンさんの真後ろを歩きながら、両手の手のひらをかざして、円を描くように動かしながら、吸い取っていく。


 すると、ポコンと小さな花の種が、手のひらにうまれた。

 素早く、ドレスのポケットにいれる。

 種の観察はあとの楽しみにとっておいて、今は、急いで邪気をとらなきゃ。


 私は歩きながら、両手を動かし続けた。

 小さな花の種が三つ生まれたところで、応接室についた。


 席についた私たちの前に、手際よく、執事のジュードがお茶を淹れてくれる。


 私は、小声でジュードに、ジュリアンさんのティーカップの位置とお菓子を左手でとりやすい場所にまで動かすよう頼んだ。

 ジュードが、私の指示通り動かしてくれた。


 ジュリアンさんの右手は邪気にまみれ、真っ黒。おそらく、動かしにくかったりするんじゃないかなって思ったから。


 すると、ジュリアンさんが、驚いたように目を見開いて私を見た。


「もしかして、ライラちゃん……。俺の右手が痛いのがわかったの? 誰にもばれてなかったのに、なんで?!」 


 そりゃあ、すごい邪気で真っ黒だから。とは言えないし……。

 うーん、どうしよう。


「ええと、なんとなく、そんな気がしたとういうか。勘……?」

と、苦し紛れにごまかす私。


 ちょっと、アル、なんとかうまいこと言って!

 そう思って、隣に座っているアルを見た。


 すると、アルが私のほうへと身をのりだしてきて、小声で聞いてきた。


「そんなに邪気がついてるのか?」


 私がうなずくと、アルの瞳が輝いた。


 あのね、アル……。

 そんなに嬉しそうな顔をしたらダメだよ? 

 お友達が痛いと言っているのに、その顔はおかしいからね?

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