第31話 アルのお土産 5

「ライラ。俺の土産は、友人のジュリアンが持ってくるから、少し待ってくれ」


「え、お友達が? なんだか申し訳ないね……」


「大丈夫だ。ジュリアンはライラへの土産を持ってきていることに気づいていない」


「ん? それ、どういうこと?」


「本当はサプライズにしたいが、前もって説明しとかないと、ライラが肝心の土産を受け取り損ねたら困るからな。……で、俺の土産、なんだと思う?」


 意味がわからない……。

 首をかしげる私を見て、アルがフッと笑った。


「わからないか? 答えを言おうか?」

と、得意そうな顔をするアル。


 その顔を見たとたん、むくむくと闘志がわいた!


「ちょっと待って、アル! 絶対にあてるわ!」


 ぴしっと言い放つと、アルの紫色の瞳が楽しそうにきらめいた。

 アルの言ったことを確認しながら、考えてみる。


「ええと、お友達は、持ってきていることに気づいていない。前もって説明が必要。そうでないと、私が受け取れない可能性がある……。ということは、普通の品物じゃないよね。預かった本人が気づくし」


「ああ」


「お友達が気づかず運んでくるということは、……目に見えないもの?」


「そうだ」


「みんなに見えないの?」


「まあ、ライラ以外には見えないな」


「え!? それって、もしかして、邪気!?」


「正解。ジュリアンには王都らしい邪気が沢山ついている可能性がある。ということは、珍しい花の種がとれるってことだろう? それが、俺の土産だ。どうだ、いい土産だろ?」


 そう言って、自慢げに私を見るアル。

 私は、思わず笑いだしてしまった。


「邪気がお土産だなんて、びっくり! お友達には悪いけれど、珍しい種がとれるのは楽しみ!」

と、喜ぶ私を見て、アルが涼しい目元をゆるめて微笑んだ。

 

 甘さがどっとあふれだして、ドキッとする。


「万が一、あいつに、珍しい邪気がついてなくて、たいした土産にならなかったら言ってくれ。あいつを、どろどろした陰謀うずまく場所に放り込んで邪気まみれにしてから、再度連れてくる。王宮なら、そういう場所には困らないからな」


「もう、アルは、おもしろいこと言うね」


 私が笑うと、アルは真顔で言った。


「いや、冗談じゃない。本気だが」


「え……? いやいや、それはダメだよ、アル!? お友達になんてことをしようとしてるの? 邪気は、わざとつけるものじゃないから。絶対、ダメだからね!

わかった、アル?」


 私はあわてて注意した。


「……ああ、わかった」

と、答えながら、すっと目をそらしたアル。


あ、その顔! 納得してないよね!?

 

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