第4話 顔面至上主義
そんなこんなで『転校生』問題は解決し、先生が授業道具を取りに教室を出ていく。
俺はそれを見送ると、バックから道具一式を取り出し授業に備えた。
こういう授業初め直後の時間ってのは、みんな授業の用意をする人がほとんどだと思うのだが……
「おい」
そんなことはせず、俺に会いにくる物好きもいた。
顔を上げると、そこには太陽光をしっかり浴びた焦げた肌に部活で鍛えられたがっしりとした体を持ち備えたワイルド系のイケメン。
しかし、彼の表情は友好的とは言い難く、鼻につくニタニタの笑いを浮かべ、俺を見下していた。
彼は
彼が俺に話しかけると、教室の雰囲気が変わっていく。
待ち侘びたような、心底嬉しそうな、今から始まることを楽しもうとしている、そんな空気に変わる。
クラス中の視線が俺の机に集まり、好奇の目が向けられ始めた。まるでヒーローショーを見る子供の視線に卑しさと気持ち悪さをプラスしたようなものが俺に注がれる。
要は、ひどく不快な視線ということだ。
俺は言葉を返す気分ではそうそう無かったが、無視しても状況は好転しないどころか、悪化するだろう。
俺は矢沢を視界に入れることなく、重い口を開いた。
「……なんだよ」
「俺言ったよな? この学校から今すぐ消えろって」
矢沢は笑顔を浮かべて言う。俺のことを見下してるのが透けて見える嫌な笑いだ。
「……」
「俺、悲しいよ。俺の言ったことを聞いてくれないなんて。俺たち友達だよな?」
矢沢は馴れ馴れしく俺の肩に手を回して、顔を近づけてくる。
気持ち悪い、馴れ馴れしい、うざい。
俺の頭にはその言葉が湧き立つばかりだった。
「友だちのお願いだぞ? 聞かなきゃダメじゃないか」
すると、辺りから矢沢のツレと思える人らが矢沢の言葉に思わず吹き出し、大笑いし始める。
「東山と友達とかやーくん、優しー」
「いや、友達が学校やめるように勧めねぇーだろ!」
「たしかにっ」
矢沢のツレは
矢沢のツレだけじゃない。クラスメートのほとんどが俺をこっそり見て、笑っていた。
――ほんと、明智原はクソだな。
俺の腹に不快感が込み上げてくる。
しかしだからといって、今矢沢に何かしてもメリットなんてない。心はスッキリするかもしれないが、後が怖すぎる。
こいつは、元三代王子の一柱だった「暴虐の主」の側近だった男だ。今でも間違いなく、矢沢はそいつと関わり合いがあるだろうし、矢沢へ不敬を働けば必ず「暴虐の主」に伝わる。
暴力沙汰を起こして、謹慎を喰らっている危険な男だ。関われば何をされるかわかったものではない。
そんな奴に目をつけられて仕舞えば、俺も美少女とラブコメどころではなくなるだろう。
それはダメだ。
俺はそれをするためだけにこの学校に入って、この待遇にも耐え凌いできたんだから。
よって、ここで俺が取るべき最善は……いつも通り適当に受け流すこと。
何もしなければ、「暴虐の主」となんてお知り合いにならなくてすむ。
「東山お前はな、この学校にはふさわしくないんだ。そんなことは自分でもよくわかってるだろ?」
「…………」
「わかってないなら教えてやろうか? お前、
何度も言うが、明智原はクソだ。そして、その最たる理由がこれ。
生徒の大半が顔面至上主義ということ。
俺みたいな平均的、平均以下の顔はここでは差別の対象になってしまう。要するに明智原の生徒にブスだと認められると冷遇扱いを受けるのだ。
なってしまえば、今朝の体当たりや今のような状況に
矢沢のセリフに、ツレどもの笑いが爆発する。クラスの関係ない生徒らも声を抑えて笑っていた。
矢沢もその笑いに気分を良くしたのか、ご機嫌に俺を
「お前みたいなブスが明智原の価値を下げんだよ。だからさ、はやく学校やめてくんね?」
「…………」
我慢だ。我慢しろ。俺。
「ほら、やーめろ。やーめろ。」
矢沢がそうコールすると、ツレどもが乗っかり、そして次にクラスの連中がそれに合わせだす。
「やーめろ」「やーめろ!」「やーめろー」「やーめろ」「やーめろ」「やめろ!」「やーめろ!」
教室中に響く、俺の学校退去を望む声。
我慢だ、我慢だ、、我―――
「――何してるんだっ!」
ガラガラと戸が開く音が教室内に響く。
戸の前にいたのは――――
「お前には関係ねぇよ。でしゃばってくんじゃねぇ王子」
金髪の雪のように白い肌、その日本人離れした容姿と性格から、学園の王子様とあだ名で呼ばれている明智原三大王子の一人。
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お久しぶりです! カクヨムコンが始まると聞いて冬眠から飛び起きました、わをんです! 今回の章は少しだけ…いや、意外と大きい変更かも。
無計画ですいません…
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