番外編 side役満女子③
このままだとひなが……
「ひなああああああああああああああっ!」
――ひなが、死ぬ。
いやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!
ようやく、毎日が楽しくなってきたのに、生きる意味ができたのに、その意味が死んでしまう。
それだけはダメだ。ひなが死ぬのだけは絶対にダメだ!
私は走った。帽子とか知るか。髪の毛が見えたってどうでも良い。走れ走れ走れ!
私は死んでも良い。ひなの身代わりになって死ぬのなら本望だ。だから、間に合ってっ!!
「…………っ!」
グルンと急に視点が下がり、体に激しい痛みが走った。
私は地面に倒れていた。レンガブロックの隙間に足が引っかかって転んでしまったのだ。
転倒により、サングラスがとれてどっかへ行ってしまったせいで周りをよく見ることができない。
「……ひなっ」
その瞬間、キキッとなるタイヤの音と、何かがぶつかる鈍い音が鳴り響いた。
私はその音を聞いて理解する。
(…………間に合わなかった)
後悔の闇が私の心を包み込む。
私のせいだ。私がひなを殺した。あの時、帽子なんて気にしなければ、強引にでも手を繋いでおけ「みよねぇーっ!」ば――
え。
私に近づいてくる足音。この声。これは――
顔を上げると、顔をぐしゃぐしゃにして泣くひなが私の体に抱きついてきていた。
ひながいる。ひなが生きている。
私は体を起こし、ひなを強く抱きしめる。ひなの心臓の鼓動が聞こえる。ひなの体がちゃんと暖かい。
「良かったっ、良かったっ……」
目から勝手に涙がぼたぼたと落ちてくる。
でもすぐに、私の中には疑問が上がってきた。
「でも、どうやって……」
「お兄ちゃんが助けてくれたんだよ」
ひなが後ろを振り返り指を刺したので、そこに視線を移した。……見えないが、確かに人がいる。
でも、「お兄ちゃん」ってことは男の人……私はついクセで警戒してしまう。小学生の時のトラウマから男性には苦手意識があるのだ。
(でも、流石に失礼だよね……)
男性でも、大事な妹を助けてくれた恩人なのだ。警戒するのは礼儀知らずにも程がある。
「あの……ありがとうございました」
顔はよく見えないけれど、見ないと失礼な気がして彼の顔らしきところを凝視して、私はとりあえず礼を言った。
少し間が空いてから男の人の声で返事が返ってきた。
「いえいえ、当然のことをしただけです」
優しくて若い声だった。たぶん、私と同年代の人なのだろう。
私は目が見えないなりに目を凝らして、彼を観察していると気づいた。
彼は足を怪我していた。おびただしい出血量でズボンが真っ赤に染まっている。
少女とはいえあくまで他人。………他人をこんな怪我をしてまで、なんなら命も危うかっだだろうに助けるなんて……見捨てる人の方が多いはずだ。助けるのが当然なわけがない。
彼は私が怪我をしている足を見ていることに気づいたのか、さっと私に見えないように体を
私に気を使ったのだろうか?
なんなんだ、この男の子……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます