番外編 side役満女子①

私は外出が嫌いだ。


 私は俗に言う「アルビノ」と呼ばれる人で、昔から悪い意味でもいい意味でもよく目立った。でも、割合的には圧倒的に悪い意味で目立った方が多い。


 小学校では男子たちに「吸血鬼」というあだ名でいじめられ、女子たちにも怖がられ、私に好んで近づく人は誰もいなかった。


 友達なんて当然一人もおらず、毎日いじめられ、怖がられ、学校に居場所なんてない。


 毎日が地獄だった。


 そして中学生になった時、周りの人たちに変化が起きた。


 私をいじめてきた男子や私を怖がっていた女子が、私の髪と目を綺麗きれいと誉めるようになったのだ。


 小学校の時は散々気持ち悪いって、怖がってきたくせに。急に手のひらを返してきたことが逆に気持ち悪かった。


 あの地獄をその言葉だけでなしにしようとしているような気がして、許せなかった。


 その時になると、私はいい加減自分の髪に悩むのはしんどくなってきていた。


 だから、私は親に相談して黒髪に染めたいと頼んだ。しかし、親から帰ってきたのは「その髪はレアだから、染めない方が絶対綺麗」という、私の気持ちを無視した言葉だけ。


 レアだからなんだ? 珍しかったら苦しみ続けることをやめてはいけないのか?


 私は絶望していた。学校にも、親にも、自分自身にも。


 外に出ると、誰もが私の髪と目を見て好奇こうきの視線を送る。私のことは見てもらえない。親にすら見てもらえなかったのだからたぶん、このさっきずっと私自身をを見てくれる人はいないのだろう。


「私の価値はこの髪と目だけなのではないか」と「私自身は誰も必要としてないんじゃないか」と。

外出して誰かが私の髪や目を見るたびそう感じてしまう。


 だから、私は外出が嫌いで、他人が嫌いで、親が嫌いで、自分が嫌いだった。


 でもある時、それは一変いっぺんした。


 私には妹がいる。もうすぐ小学一年生になる妹で、私は自分の見た目は怖いだろうと普段から妹を避けて暮らしていた。


 でもたぶん実際は妹の為なんかではなくて、きっと自分のためで妹に小学生の時の女子と同じように避けられて傷つきたくなかったんだと思う。


 妹が私を避ける前に、私が妹を避けたのだ。


 しかし、一緒に住んでいる家族だ。避けると言っても限界があった。妹が三歳、私が十二歳、中学生の時だ。


 妹と鉢合はちあわせてしまい、いつものように逃げようとすると、妹が小さい声で言ったのだ。


「みよねぇちゃん、きれい」


 私を指差して、そう言ったのだ。


 まず私は怖がられないことにびっくりして、そして妹は私の髪のことを言ってるのだろうな、そう考えた。


「うん。綺麗でしょ? 生まれつきなんだよ」


 私は自身の髪を触りながら、言った。


 中学校で何回も何回も吐いた定型文を吐く。


 すると、妹はキョトンとした顔で言うのだ。


「ちがうよ。がきれいなんだよ!」


 最初、私は言葉の意味を飲み込めなかった。


「みよねぇちゃんはびじんさん! かみのけもおめめもきれいだけど、つめ! ぴかぴかしておほしさまみたい。わたしもしてみたい!」


 妹は私の爪を指差して、にっこりと笑って言う。


 私は自分の爪を見る。ネイルをしていたのだ。初めてのネイルで緊張したけど、これで髪と目以外を見てくれるんじゃないかって期待を込めて頑張った。


 でも、相変わらず誰もネイルのことなんて触れてくれなかった。気づいてくれすらしなかった。


 けど……妹は……ひなだけは…………


 私が突っ立っていると、妹はとてとて、と近づいてきて私の足にハグをした。


「みよねぇちゃん。泣かないで」


「――――え」


 私は泣いていた。


「えっ、あれ、なんで」


 涙に気づくと余計止まらなくなって、ぬぐっても拭っても涙が溢れてきた。


 足に力が入らなくなって、私は膝から崩れ落ちた。そして、三歳の子供の前でみっともなく泣きじゃくった。赤ん坊のように顔を歪めて泣いた。


 すると、ひなは心配そうな顔で私を見て必死に謝ってきた。私を泣かせてしまったと勘違いしたらしい。


「みよねぇちゃん、ごめんなさい……わたし、わるいこといっちゃった?」


 違うんだよ。ひな。私は嬉しくて泣いてるの。


「……ありがとう、ありがとうね。ひな」


 私はひなをぎゅっと抱きしめた。

 

 ひなは私の髪と目以外を始めて見てくれた子。だから、私はひなをこの世の誰よりも大好きで愛してる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 五話を上げた後に二.五話を上げるという、行き当たりばったりさ。




 

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