折り紙の月その5
朝はカーテン越しの日差しで目を覚ます。アラームは使いたくない。睡眠のリズムに反して電子音で起き上がるのは身体の深い部分で負担をかけているに違いない。
六枚切りのパンに、一か月前に買ったジャムをスプーンでコピー用紙より薄く塗る。作り置きのゆで卵に塩を多めにつけてかじって、ビタミン剤を飲んだ。
炭水化物とタンパク質、ビタミンが一番のエネルギーだ、食物繊維があれば十分だが、野菜を買うほどの余裕はない。
畑野はまだいびきをかいている。いびきを注意してやりたかったが、どうせ何か言い返されるのが目に見えているし、治るはずもないのでいつも無視してサンダルを履いて朝日を浴びる。
丁度階段を降りてくる少女が見えた。
「おはよございますー。」
ぴょこぴょこ兎が跳ねるように階段を調子よく降りてきた。白と紺のシャツとスカートは、近所の中学校の制服である。どことなく危なっかしい感じは、羊がはしゃいでいで走り回って溝にハマって抜けなくなった映像を思い出させた。親は心配しているだろうな、と思った。
「おはよう。」
と返すと、
「今日も朝練です、早起きしんどいなー。」
その子は独り言かよくわからないような事を言った。確か前に部活でバスケットボールかバレーボールかをやっていると言っていたような気がするが、思い出せない。
「いってらっしゃい。」
と僕が言い終わるのを待たずに走り去っていった。どうにもそそっかしい。中学生にもなるともう少し落ち着いているもんだったはずだけどな、と思い返した。
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