折り紙の月その4

 氷で嵩増しされていない芳醇なバニラの香りのアイスクリームを互いに夢中になって掬っていると、

 

 どたどた、と天井で軽いものが跳ね回るような音が壁伝いに響いてきた。

同居人は途端に苛立ちを見せたが、


「きっとあの子だよ。」

と諫めると、

「いくつまで暴れるつもりなんだよ、あのガキは。」

と言い、腰を下ろしてまたアイスを紙スプーンでほじくり始めた。


丁度上の階にはマルチーズを想起させるようなそそっかしい、十二歳の小柄で華奢な女の子が両親とともに暮らしている。


「文句言いに行くのは勘弁してくれよ、こっちは気まずくなるからさ。」


「行かねえよ、あんなに謝られると怒る気も失せる。」


 一度彼が注意のつもりで上の階を訪ねたとき、上の階の娘の両親は大変重くとらえたようで平謝りを繰り返されたあげく、とうとう牙を抜かれて立ち去った過去があった。しかし遅くまで共働きで面倒を見れず、鬱憤を晴らすためか少女は時折音を立てていた。


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