第16話 戦果
「あらあら、エルラン君。とっても男前のお顔をしているわね。また誰かに殴られたのかしら?」
ゴブリンを狩り始めたその日、スキルの回数を使い果たして地上に戻ってきたところで教会のシスター、ナタリー姉ちゃんと出くわしてしまった。
「ははは、いや、ちょっとゴブリン君と遊んできまして……」
「あらあら、それはおいたしちゃったわね~。めっ。ですね」
「あ、あはははは」
「で、エルラン君はそのお顔のままおうちに帰るのかな~?」
「ええまあ」
「それじゃだめよ。リエルちゃんが心配してしまうわ?」
「ええ、でも仕方がなくて……」
「もう、男の子ってそういうところがダメなのよね~。えいっ。【
ナタリーが治療の呪文を唱えると、エルランの腫れあがった顔は瞬く間に治っていった。
神父の娘であり、教会のシスターでもあるナタリーは【魔法(回復)LV4】のスキルを習得している。
なんでも、【祝福の儀】の時はスキルレベルは【2】であったのだが、その後のシスターのお勤めを続けることでスキルレベルが上がったのだとか。
この界隈で、スキルレベルが【3】よりも上回ることは珍しい。
衛兵長であるベングトの父でも【戦闘(剣技)LV3】なのである。
【2】であっても常人よりもはるかに優れているとみなされ、【3】に至ってはベテラン扱いなのである。
そんななかで【4】のレベルを持つナタリーはこの国でも有数の回復魔法使いであると言える。
ちなみに、ナタリーの父で神父でもあるあるアマデウス・ステニウスは【信心(状態回復)LV4】を持っており、こちらは魔法の呪文と違い、神への祈りをもってして病気などの状態異常を治癒する能力である。
「わあ、さすがナタリー姉ちゃん。痛みが全くなくなったよ!」
「うふふ、特別よ? いつも教会に喜捨してくれているお礼も兼ねてるんだからね?」
「ありがとう! ナタリー姉ちゃん!」
「はやくおうちに帰ってリエルちゃんを安心させてあげなさい。あと、お外ではシスターって呼んで頂戴ね?」
「はーい! シスターナタリー姉ちゃん! いつもリエルの面倒見てくれてありがとうね! じゃあ、また!」
「うふふ、気をつけて帰るのよ?」
ナタリー姉ちゃんと別れた自分は、一路我が家に――向かう前に寄るところがあった。
冒険者ギルドである。
◇ ◇ ◇ ◇
「おう! エル坊! 無事帰ってきやがたか!」
ギルマスのヴィダルさんが出迎えてくれた。
「エル君? 無茶なことはしてないでしょうね!?」
受付嬢をしている隣の家のお姉さん、カルロッテも出迎えてくれる。
「もう、エル君のことだから顔とか腫らして帰ってくるんじゃないかって心配してたんだからね!」
「ははは……」
カル姉、正解です。
「で、どうだったんだ? 戦果のほどは?」
「あ、そうだった! ヴィダルおじさん、これ見てよ!」
自分はカル姉の立つカウンターの上に、袋から魔石を取り出して広げていく。
「おお、そいつはゴブリンの魔石だな。だいたい90個ちょいってとこか? あと、エル坊、ここではおじさんじゃなくてギルマスと呼べ」
「うん! ギルマスおじさん、さっそく買取してよ!」
「おいおい、ギルマスおじさんってさっきより悪いじゃねえか……。まあいいか、カルロッテ、査定してくれや」
「はーいただいまー」
ゴブリンの魔石は、スライムのよりもほんのちょっと大きい。
スライムのは一個一律銅貨1枚なのに対し、ゴブリンのは大きさに多少のばらつきがあるのだ。
なので、面倒ではあるが重さを量り、基準を満たすものは銅貨1.5枚(銅貨1枚に鉄貨5枚)、それ以下の物はスライムのと同じく一律銅貨1枚となるのが慣習だ。
稀に、大幅に大きな魔石がドロップされる時もあり、その時は銅貨が2枚もらえるのだが、滅多に見られることはない。
「んーと、ゴブ中が74個、ゴブ小が18個だね。ゴブ大は無し! しめて銅貨129枚だねっ!」
おお、わりかしいい稼ぎになるな。
【渡し屋】の営業ではスライム魔石と合わせて最大で銅貨150枚を超えるときもあるにはあるが、平均では100枚前後だからな。
まあ、1日の稼ぎとしては妥当なところだろう。
「それにしてもエル坊よ。ソロでこれだけ狩れるのはすげえ方だからな。あまり他の奴に知られないようにしろよ?」
「へ? そうなの?」
「ああ、普通は5人でパーティーを組んでも2階層ならゴブリン300匹くらいで湧きが少なくなるからな。それを5人で分けるんだ。今日のお前の稼ぎよりも少ないんだよ。まあ、3階層以降にまで行けば話は別なんだがな。」
そうなのか。
大体今日は100匹狩ったから、その3倍の数を5人で割る……一人あたり銅貨70枚から80枚くらいになるのか。
「まあ、そういうこった。ところでエル坊よ?
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