3 ーわかってほしいと思うのは我儘なのか?ー
突如として始まったゲリラライブを終えた俺と熾月は、近くのモールにいた
「え、やっぱさぁ、絶対経験あるよねパフォーマンスの」
「残念だけどそれはないんだなぁ~w」
最初の時よりは仲が良くなったと言えるだろう
今俺はピアスをばっちり開けて熾月から借りたパーカーのフードを目深く被って、顔には黒マスクをしている
「えぇ~、本当か、??」
「本当だよwwwあ、熾月って高校生だよね。寮なの?」
「んぇ、そうだけど?」
「、、、、泊めてほしい」
「ッ、は、?いやいや考えてみろって。高校生男子の部屋に女子中学生が止まるってやばいだ「俺男」、、、、えぇ~、、、?」
体つきも声も女子っぽいために周囲からは女子だとみられているがしっかりと変声期を終えた男子中学生だ
まぁ、いじめが悪化しないためにも永遠に女声を出しているからかどっちの声も出せるんだけど
「、、、まぁ、いいけど別に。家庭環境、?」
と、察してくれたのか、原因となっていそうなものを挙げてくれる熾月
俺は小さくうなずくだけした
「ま、そーゆ―事もあるよな。食べたら荷物だけ持ってきな。俺の家までわからんだろうし」
と、短時間でものすっごい仲が良くなった相方の神のような一声に感謝をしつつ、モールを出て我が家へ行く
「、、ここで待ってて、今持ってくる」
と、近くの公園に熾月を待たせて自宅へと足を運ぶ
正直なところ、家にいても守ってくれる人は誰もいないんだ
熾月が居なければ、今日もどこかで所在ない夜を過ごしていたことだろう
、、、、、出会ったばっかりのこんな愚図に家泊めろなど言われたら、最悪だろうが、明日にあったら金を置いて出て行くつもりだし、一夜だけ許してもらってもいいだろうか、
本当は、あの人には、全部わかってほしい、なんていうのが本音なのだが
なんてことを思いながら、自室の窓から侵入する
「これと、これ、あとはこれでいいか、、金は、よし」
と、自分の荷物をショルダーバッグにまとめてもう一度窓から出ようとしたが、、、そう簡単には行かせてくれないみたいで
「おい、お前どこに行くつもりだ」
「、、、、、、、」
何も見ないで無言で窓から出る
スピードが速く、あのノロマには反応できなかったのだろう
後ろから罵声が飛んでくるが、かまわず逃げる
「ごめんお待たせ、行こう」
「え、あれお父さんじゃないの、?え、めっちゃ怒ってるけど」
「大丈夫、あの人は親権持ってるだけ。なるべく早めに逃げたい」
と、それだけ零すと無言で俺の手を取って走り始める
しばらく走ると、ゆっくりと減速した
「ここが俺の家、というか部屋。とりあえずリビングに荷物おいて座っちゃって」
「は~い、」
凄く、整えられている部屋だ
(とりあえず此処に置いたらいいか)
と、リビングの端っこ。窓際にショルダーバッグを置いて、テーブルの近くに座る
「さ、泊めるけども何があんのか話してくれんかな~、?」
「え、話してもいいの、、?」
「逆に話さない道あったの?」
「、、、熾月、聞いてもいいんだけど、逃げないで受け止めてくれる、?」
「勿論」
と、熾月が発言したのを皮切りに、俺の地獄を話し始める
〇●〇
俺は元々、こんなに女々しくはなかった
だけど、ズボンもスカートも好き
可愛いものもかっこいいものも好き
生まれつき、男の声も出せたし女の子の声も出せた
思えばそれがダメだったんだろう
母親からはずっと罵倒されて、父親は女作って出て行った
さっき罵倒していたのは母親の再婚相手
まぁ金のない母に擦り寄ってきた屑なんだけども
俺はそんな屑に、、金を入れろと脅されて、永遠とバイトして
あの人に入れた金以外でも自由な金なんかなくって
自由な時間すらも、親権持ちからのの監禁
母親は結局逃げた
離婚した
まぁ、そんな人なんだからこんな出来損ないなんかいらないんでしょうね、捨てたよ
「お前みたいな愚図、産まなきゃよかったって」
その言葉で決めたんだ
もう、『俺』は出さない
ずっと、私で居る
好きだった筋トレも、陸上も、合唱も、全部捨てた
何もかも
〇●〇
「、、、、でも、歌だけは、捨てきれなかった」
自分で話していて泣きそうになる
実際、此処まで話したのは熾月が初めてだ
「Kanoaとして、戻ってきてしまった」
元々、活動はしていたが、屑男のせいで活動を辞めた
「まぁ、嫌ってわけではないんだけどね?
むしろ熾月が、Kanoaとして引き上げてくれたおかげで、あの家から出られた
お金はしっかり用意している、勿論今の時点で出してもらって構わn「そんなのするか!」ッは?」
目の前で俺の話を聞いてくれていた熾月が、大きな声でそんなことを言う
「ねぇ、Kanoaはさ、俺の事頼ってくれてる、?相棒になりたいんだよ、俺は」
と、まっすぐとした目で俺を見つめる
言葉の出ない俺を傍目に、そのまま俺が、欲しくて焦がれた言葉を、紡いでくれる
「頼ってよ、今日あったばかりだけど、俺は信頼してる。
出してもらって構わないなんて言わないでよ、むしろずっとここにいて」
泣きながら、俺はその言葉を聞く
「ね、?Kanoaが思ってるよりも、俺はKanoaの事、信頼してるんだよ、?」
「だからさ、一緒に歌おう、?」
そう言う貴方は、輝いていた
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