いい子

ㅤ見て見ぬふりをした第三者も共犯だなんて横暴だと思うので、いじめっ子を殺した。


ㅤ正直な話、こいつがあの子に何をしていたのか、詳しくは知らない。クラスの中でぽつねんと一人生きていくことに必死で、ひとのことをそこまで気にしていられなかった。気にしているのだろうか、皆は。

ㅤ下校途中、拾った大きめの石で殴ればふらついて振り返ったそいつを何度も殴打した。人を殴るだなんてこと初めてで、石を握った手のひらが痛くなって、なんだか損をした気になった。だけどもこいつのせいで自分がなんだか悪者みたいにされるのが嫌だったので、こうするより他なかった。

暗くて狭くて人けがなくて危ないから通るのはやめなさいねと言われている近道を通りたがるのがこいつだということくらいは知っていた。

ㅤ血液はすぐに冷えて冷たくなる。死んだ体に残った体温が薄気味悪い。

ㅤ学校の裏山は私有地なので勝手に入ってはいけないと言われている。所有者は足腰が悪く、ほとんど山に来ないことも知っている。この山は、祖父の山だからだ。

ㅤ人を殴るよりも埋めることが大変だなんて、授業では習わなかった。一度家に帰り持ってきたスコップで穴を掘る。昨日の雨で湿った土は重くて、やっぱり損をした気分になった。いい子でいるのは大変だ。

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