15話

 「で、成瀬には会えたの?」


 昼休み、お昼ごはんを食べていると、近くを通りかかった桜井さんが質問を投げかけてくる。


「いや、会えなかった......」


 そう答えると、なぜか桜井さんの表情が固まった。


「そんなに怖い顔しないでよ。たまたますれ違いになっちゃっただけかもしれないじゃん」

「......そうかもしれないけど」


 あれから、何度か成瀬さんの高校に行き、校門の前で待っていたけど、成瀬さんを見つけることはできなかった。


 だから。


「今日会えなかったら、諦めることにする」

「そっか」


 私の宣言に桜井さんがどうでも良さそうに返事をする。実際、どうでもいいのかもしれない。


「成瀬さんからは拒絶されてるわけだし、あんまりしつこく付き纏っても迷惑かなって」

「ふーん。......成瀬はそんなこと、思ってないと思うけどね」

「え?」

「なんでもないよ。まあ、星乃がいいならそれでいいんじゃない?」


 それだけ言い残すと、桜井さんは自分の席に戻って行った。


 ぼーっと授業を受けていたら、いつの間にか放課後になっていた。

 荷物をまとめた後、学校を出て見慣れた道を通り成瀬さんの高校へ向かう。


 今日で最後だと思うと何だか感慨深いな、なんてことを考えながら待っていると、他の人から離れた位置で俯きながら、とぼとぼと歩く人影が見える。


 もしかして。

 

 少し近づいてみる。


 近づくにつれて、確信に変わる。けれど、同時に足が止まる。なぜなら、彼女が目元を拭う仕草が見えてしまったから。


「成瀬さん......」


 私は事情を知らないし、成瀬さんが今、何を考えているのか、なんてわからない。


 だからこそ、今できることは——


「今日の天気予報、晴れって言ってたんだけどな」


 私は成瀬さんに近づいて、できるだけ普段通りの調子で、彼女に声をかけた。

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